2129エキスパートが答える!アトピー性皮膚炎Q&A
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Chapter2アトピー性皮膚炎の治療28皮膚炎の有無は見た目だけでなく,立体的な変化を触れるか否かで判断するべきである 「ステロイドを塗ってもよくならない」という患者に,ステロイドを外用していた部位を尋ねると,搔き傷のみに塗っていたということも少なくない.湿疹病変を触診すると,真皮に浸潤している炎症細胞や表皮の変化を浸潤(ブツブツ,ザラザラ,ゴワゴワなどの立体的な変化)として触知できる.一見,軽度の乾燥皮膚にみえるアトピック・ドライスキンも,組織学的には炎症性の変化がみられ,触ってみるとザラザラとした変化を触れる.診察の際には,患者や家族とともに,皮膚を触って「いい状態の皮膚」と「皮膚炎の皮膚」の感触の違いを体感してもらい,皮膚の立体的な変化を触れる部位(すなわち皮膚炎の起こっている部位)には,ステロイド外用薬を塗るべきであることを伝えることが肝要である.皮疹の浸潤がなくなるまでステロイドを続ける 「ステロイドを塗ってもよくならない」という患者に,まったく効かないのかを尋ねると,「ステロイドを塗るとよくなるが,やめるとすぐ悪くなる」という答えが返ってくることも多い.このような場合には,スキンケアを継続していない可能性や悪化因子への配慮が欠けている可能性のほか,皮疹が十分に軽快する前にステロイド外用を中止している可能性を考える必要がある. ステロイドを短期間外用すると,真皮に浸潤する炎症細胞の活性化が抑制されて紅斑や痒みが軽快するが,浸潤細胞が皮膚に残っていると軽微な刺激で容易に浸潤細胞が再活性化し,再び搔破によって皮疹が悪化してしまう.慢性皮疹へのステロイド外用の目的は,浸潤細胞を健常なレベルに戻すことである.軽症から中等症の患者での検討では,ステロイド外用2週間後には浸潤細胞が健常なレベルになっていたという報告がみられる2). 一方で,苔癬化や痒疹などの慢性皮疹や浸潤の強い紅斑では,触診で浸潤がなくなるまでに2週間以上の外用を必要とすることをしばしば経験する.患者には,ステロイドの外用は「皮膚の赤みや痒みがなくなるまで」ではなく,「芯がなくなって,周りの皮膚と同じくツルツルになるまで」続けるよう指導している.簡単な図Point2Point3図2 ステロイド使用と皮疹の状態リンパ球の冬眠状態赤み・痒みはないが触ると浸潤を触れる(芯が残っている)リンパ球治った状態赤み・痒みがなく,触っても浸潤がない(芯が残っていない)アポトーシスリンパ球赤み・痒みステロイド外用ステロイド外用表皮真皮

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