2131脳性まひの療育と理学療法
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第4章 筋緊張の評価としてのfastとslow stretch spasms—angle計測11第4章中の約半数で,経過をみることのできる安定したデータを示す例が存在します.数か月ないし半年に1回といった間隔で計測したデータであっても,症例の状況評価・経過観察に使用できるのです. 結論としては,S s-a値,F s-a値は,使用するにあたり注意点があることは意識すべきです.S s-a値は,同一検査者であっても測定誤差が大きい場合があることを知っておくべきです.そして,F s-a値測定では同一検査者であることが望ましく,同一検査者であれば,より誤差は少ないと考えてよいでしょう12).spasms-angleの内容3 長谷は,「筋緊張は,他動運動中に誘発される反射に基づいた筋収縮と,筋・腱および関節構成体の弾性要素の総和として生じる」と指摘しています14).fast stretchによるspasms-angleとslow stretchによるspasms-angleは,この内容を含んでいる筋緊張評価法であると考えています. この角度計測法は,当初「脳性まひの筋緊張の評価」や「上田法により痙縮をどの程度減少させることができるかの検討」のために使ってきたこともあり,spasms-angleと命名してきました.しかし,名称としては不適切と考えています.なぜならば,この角度は痙縮を直接反映するのではなく,総じての「筋緊張」を反映すると考えることが妥当だからです.なお,ここでいう「筋緊張」とは,病的な場合には痙縮と筋粘弾性の総合を表しています. ともかくも,fastとslow stretch spasms-angleの計測を経時的に行うことで,「治療効果や経年的変化を大雑把に追うことが可能」であり,「(半)定量的 指標」になりうると,この間の経験から考えてきました. 本方法は,筆者のオリジナルではありません(表5).slow stretchは以前からROMとして計測されてきました.fastとslow stretchによる角度は,Reimersらも採用した考えです20).また,Tardieu scaleの fast stretch時の角度であるR1,slow stretch時の角度であるR2は,筆者のF‒HAM s-a,S-HAM s-aと同じです.Tardieuらが1950年代に報告し,その後modified Tardieu scaleとして広まっています21).国内では穐山らにより同様評価法の報告19)がなされています.穐山らは,「Fは秒速100度以上」と表現していますが,筆者の方法もおそらく同程度の速度と考えます.fast stretchとslow stretchの意味4 F s-a値は,筋のストレッチで引き起こされる,おそらく筋紡錐よりのグループⅠa線維と,腱ゴルジ器官からのグル‒プⅠb線維よりの求心性インパルスを通し興奮させられたα運動ニューロンによる筋収縮の影響が入っています.軟部組織の粘弾性の影響が主というより,脳性まひの静的状態での伸展反図2 ROM角度ないしspasms-angle値の評価・測定法②HAM-ROM③ABD-ROMslowfastslowfastslowfast④S-O-ROM⑤DKE spasms-angle⑥DKF spasms-angleslowfastslowfastslowfast①SLR-ROM表5 spasms-angleとTardieu scaleの関係本書におけるspasms-angle(度)Tardieu scale(度)急速なストレッチでの最初の引っかかり角度fast stretchによるspasms-angle(F s-a)R1最大関節可動域(ROM)slow stretchによるspasms-angle(S s-a)R2

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