2134皮膚科研修ノート
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勉強方法B31 医師の使命は人々の健康を守ることであり,医師はこの使命達成のために自分の知識と良心を捧げるべきである.一方, 医学はこれまで先人が築き上げてきた経験と観察によって得られた莫大な情報に基づいて確立された学問である.通常,医師は学生時代に教科書で勉強して基本的な医学知識を習得するが,教科書に書かれているような常識的な事柄も元を正せば医学者の観察に基づく一編の論文が原点である.この事実は過去も現在も変わっていない.つまり,今経験したことを伝えていくことが後の医学の発展には不可欠であり,日々の臨床で経験した症例や研究内容を論文として発表することは医師のもう一つの重要な使命なのである. 論文発表は,可能であれば英語で行うことが望ましい.当然ながら,日本語で書かれた論文は日本人にしか読まれない.つまり,日本語が理解できる医師にしかその知見は伝えることができないのである.しかし,多少の人種差はあっても医学の知識は全世界共通である.したがって,真に医学の発展に貢献するには,英語でしっかりと論文を発表することが重要である.実際に英語で論文を発表してみると,別刷請求や症例に関する問い合わせなどが国外からも多数来て,その影響力に驚かされるものである. 論文を書く重要性については理解できていても,いざ論文を書こうとすると何から手をつけていいかわからず途方に暮れてしまうという若手医師も少なくないだろう.本稿では,若手医師向けに一般的な論文執筆の手順について解説する.1準 備a 過去の論文を調べる………………… まずはじめに,取り組もうとしている題材が論文に適しているかどうか,過去に同じ分野で報告されている論文をPubMedなどを用いて徹底的に調査する.関連する話題の最近のreview論文を精読して,過去から現在にわたる臨床研究のトピックの変遷や現在話題となっている領域について勉強するとよい.また,学会では論文化されていない最新の話題が取り上げられている場合も多いので,学会に参加する機会があればその題材に関連するセッションに参加し,その分野の最近の動向や最新の知見を確認しておくようにする.b 主旨を決める………………………… 予備調査をもとに,指導者とよく相談したうえで論文の主旨を決める.いかに臨床的に意味があるのか,どのように今後の臨床に役立つのか,といったことを考えて論文の主旨を決めるとよい.新しい知見がある場合は,それに絞って1つの結論を導くようにすると分かりやすい論文になる.すでに報告されている内容であっても,より多くの症例数でより長い期間観察できている場合や,似たような症例数や経過観察期間であっても既報告が少ない場合などは,過去の論文で報告されている知見を補強す  論文を書くことは医師の使命の一つであり,医学の発展に不可欠である.  学会発表をしたら,知識が充実しているうちに論文を書き上げよう.DOsB 勉強方法論文の書き方9

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