2134皮膚科研修ノート
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32るという観点から論文発表する価値があると考えられる.c 倫理面への配慮……………………… 生命科学系の論文を発表する際には,その対象がヒトであっても動物であっても,倫理面に十分配慮することが求められる.症例報告や診療録を用いた後方視的研究などでは,あらかじめ倫理委員会に包括申請してあり,患者や代諾者の同意も得てあることが多いが,確認を怠らないようにする.これらの2点に不備があった場合,受理後に論文撤回となる場合もあるので注意が必要である.d 学会発表……………………………… 論文作成に先立ち学会発表する機会があれば,積極的に発表するとよい.学会では発表時間が限られているため,準備の段階でより重要なポイントを明確にすることができる.発表後に専門家や同様の症例を経験した医師と議論することで,有益な情報が得られることが多い.議論の内容は忘れないうちに書き留め,論文をブラッシュアップする際に役立てるとよい.2論文執筆a 執筆のタイミング…………………… 学会発表前までにある程度書いておき,発表後に質疑応答で得られた情報を反映させて一気に仕上げるのが理想である.理想通り行かなくても,学会発表時が最も知識が充実しているのは間違いないので,遅くとも発表後1か月以内に仕上げるようにする.日々の業務に忙殺されているとあっという間に時間が過ぎてしまい,思い立ったときにはすでに同様の論文が発表されていたり,新たに文献検索をしなければならないなど,内容を吟味し直す必要が出てきてしまい二度手間となる.また,論文を仕上げる際には指導医と直接議論することは重要なので,異動がある場合は異動前に書き上げるようにする.b 投稿規程を確認する………………… 指導医とよく相談したうえで,投稿先の雑誌を決める.雑誌によって構成の順序や語数,図表の数などが異なるので,最初に確認しておく.投稿先の雑誌に最近掲載された論文数編を参考にして,形式を真似るようにするとよい.c 書く順序……………………………… はじめに,定型的な記載で十分な部分,つまり「症例報告」,あるいは「対象と方法」「結果」を書く.その際に,最初に図表を作成しておくとよい.図表と本文を照らし合わせながら,その主要なデータを本文でしっかり説明し,さらに主要データを補強する副次的なデータについても記述するようにする.次に「背景」と「考察」を書くが,主旨の一貫性が保たれるように意識して書くことが重要である.「背景」では,過去の報告に触れながら研究をする根拠となった問題点や仮説,および研究の合理性を説明する.「考察」では,研究の意義と妥当性について,過去の文献を多数引用しながら結論が論理的に正しいと説得できるように記載する.要旨は論文の印象を決める最も重要な部分なので,研究背景,結果,結論について十分な情報を入れつつ,バランスの取れた内容にすることが重要である.謝辞では,著者以外で研究に貢献してくれた人や研究費をサポートしてくれた組織に謝意を述べる.利益相反では,利害衝突が生じる可能性のあることをすべて記載する.参考文献には,雑誌の投稿規定に正確に従って引用した文献をすべて記載する.Endnoteなどの文献管理ソフトを用いると便利である.d 推敲と校正…………………………… 自身で何度も読み直して十分確認してから,指導医のチェックを受ける.英文の場合は,必要に応じて英文校正に出す.
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