2134皮膚科研修ノート
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741発疹を学ぶことの意義a 発疹学は過去の遺物か 皮膚科の教科書には最初に発疹学という項目がある.そこには紅斑,丘疹,落屑など皮膚科独特の言葉が並んでおり,それぞれがどのような発疹を指すのかが解説されている.初心者にとってはとっつきにくい部分であり,こんなことを覚えて発疹を文字で記載するより,写真を1枚撮ってカルテに張り付けたほうがはるかに正確であるように思える.デジタル写真やPCでの画像処理になじんでいる現代の研修医にとって,発疹学は写真のない時代の過去の遺物であり,いまさら学ぶ必要はないと思われるかもしれない.b 見ているのに見えていない 医学生や研修医にベッドサイドで実際の皮疹を見せ,「よく見て網膜に焼きつけておくように」と指示し,診察が終わった後で「今見た皮疹を表現してください」と尋ねることがよくある.若いので短期記憶は優れているはずであるが,満足すべき答えが返ってくることはまずない.「そこに存在した」発疹をすべて答えるのは難しいだろうが,「水疱はあったか」「痂皮があったか」「びらんはあったか」などの単純な質問にも答えられないことが多い.つまり,初心者は皮疹を見たつもりでも実は全く見えていないのである.皮疹をきちんと見るためには,発疹を分類,分析する能力が必須である.c カメラは人間の眼にかなわない 接写用のレンズをつけて最大限に拡大しても,人間の眼の分解能を超える写真を撮るのは難しい.さらに皮疹は多くの場合,人体の広範囲に及んでおり,そのすべてを人間の眼の分解能に迫るようなレベルで写真に残すことは不可能である.また,写真では隆起,硬さ,熱感などの触診所見が表現できない.このように皮疹の診察は写真撮影で代用できるものではなく,熟練した皮膚科医が全身を詳細に観察し,肉眼で見えるぎりぎりのところで皮疹を観察記録することによって,初めて可能となるのである.d 皮膚科の診断は絵合わせではない 分厚い皮膚科アトラスを買ってたくさんの写真を見れば,皮膚科の診断ができるようになると考えるかもしれない.確かに初学者にとって必要な勉強法であるが,発疹の見方がわからないままに写真を見ていても単なる絵合わせにしかならない.実際の皮疹はアトラスにあるような典型的なものばかりではない.非典型例や複雑な合併例などを評価できるようになるためには,皮疹の種類,色,大きさ,分布などを分析的に詳細に診察し記録する能力が要求される.A 皮膚科の診察発疹の種類とその記載方法3  できるだけ皮疹に近づいて,必要ならルーペを用いて,肉眼の分解能の限界まで細かく皮疹を観察しよう.  実際の皮疹を見て,その皮疹がどのような発疹要素から構成されているかを分析的に観察するトレーニングをしよう.  発疹を形容するための慣用表現を駆使し,皮疹の現症を文章で表現できる能力を身につけよう.DOs

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