2135消化器研修ノート
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第4章 研修で学ぶべき知識と技術223内視鏡検査Bからは大腸腫瘍に対しても保険収載された. 近年,ESDは早期消化管癌に対する内視鏡的治療として広く普及した.しかし,手技的に難易度も高く,出血や穿孔といった偶発症の頻度が高いなどの問題点もある.2適 応a 食 道………………………………… 内視鏡的治療の適応となるのは,リンパ節転移がほとんどないと考えられる病変である.食道表在癌のESD適応については,食道癌診断・治療ガイドラインでは,壁進達度が粘膜層のうち,粘膜上皮層(EP)と粘膜固有層(LPM)の病変ではリンパ節転移は極めてまれでありESDの絶対的適応となっている.また,粘膜筋板(MM)や粘膜下層にわずかに浸潤(200 μmまで)する病変は,リンパ節転移の可能性があり相対的適応となっている.b 胃……………………………………… 早期胃癌における従来のEMR適応病変は,胃癌治療ガイドラインによれば「リンパ節転移の可能性がほとんどなく,腫瘍が一括切除できる大きさと部位にあること」である.具体的には「2 cm以下の肉眼的粘膜癌と診断される病変で,組織型が分化型腺癌(pap,tub1,tub2).肉眼型は問わないが,陥凹型では潰瘍所見を伴うこと」とされている.その後の5,000例を超える手術症例の検討によると,①粘膜癌で分化型で潰瘍所見を伴う病変の場合は大きさ無制限,②粘膜癌で分化型,潰瘍所見を伴う病変の場合は3 cm以下,③未分化型,潰瘍所見を伴わない病変なら2 cm以下,④分化型,SM1癌(500 μm以下の浸潤)で潰瘍所見なし,脈管浸襲なし3 cm以下の病変であればリンパ節転移の危険性はほとんどないことが判明し,これらの適応拡大病変も一括切除が可能であれば,根治的治療になりうると考えられている.胃癌治療ガイドラインでも臨床研究的に適応条件の拡大が可能であることが示唆されている.c 大 腸………………………………… 大腸癌研究会における内視鏡摘除手技の標準化プロジェクトや,日本消化器内視鏡学会での先進医療として施行された大腸ESDの安全性と有用性が認められ,大腸ESDの保険適応病変は最大径2~5 cmの早期癌または腺腫とされている.腺腫の場合はEMRによる一括切除が困難な病変が適応で,具体的には側方発育型腫瘍(LST)などである.早期癌の場合は粘膜内癌から粘膜下層軽度浸潤(1,000 μm以下の浸潤)と診断した2 cm以上の病変が大腸ESDの適応となる.3術前チェック 既往歴や基礎疾患の評価を行う.抗血小板薬や抗凝固薬の服用の有無を必ず確認し,それぞれに定められた休薬期間を確認する.また,高周波電源装置を使用するため,心臓ペースメーカー患者は,治療前後にペースメーカーのチェックを受ける.4準備するものa 使用機器……………………………… スコープは送水機能付きスコープを用いる.切開・剝離を行ううえで出血はほぼ必発で,この出血をいかにコントロールできるかが重要である.送水機能を使用することでよりよい視界が保たれるため,出血点の正確な把握と速やかな止血処置が可能となる. また,穿孔した場合などは気腹症や腹部コンパートメント症候群の予防からCO2送気で治療を行う.b 前処置………………………………… 血圧計,パルスオキシメータを装着し,呼吸循環動態のモニタリングを行う.ESD開始時に塩酸ペチジン17.5~35 mg,ミダゾラム0.02~0.04 mg/kgを年齢,体格,既往症,飲酒歴に応じて用いている.

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