2135消化器研修ノート
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132DOs1基本的な考え方 肛門・直腸指診は特別な器具を必要とせず,肛門・大腸のみならず泌尿器・婦人科疾患などについても有意義な情報を得ることができる.しかし,診断する気持ちがなければ単に指を挿入するだけになってしまう.指診のルーチン・ワークを行えば的確な診断が可能で,病変を見逃すリスクを減らすことができる.2指診のルーチン・ワーク1,2)a 肛門の観察…………………………… 指診の前に肛門の観察を行う.体位は膝を曲げた側臥位が一般的である.肛門周囲の異常や分泌物などを観察する.肛門部痛を訴える患者や視診で見張りイボ(図1)を認める場合は激痛を与えることがあるので,特に愛護的に指診を行う.b 肛門指診……………………………… 薄いディスポーザブル手袋をはめ,示指に潤滑ゼリーを塗り,肛門周囲の皮膚をなでるようして圧痛や索状物の有無を確認する.次に肛門内にゆっくり挿入する.まず括約筋間溝を触知する(図2).徐々に指を進めて肛門の締まり具合を感じる.また,肛門管内をさすったり回したりして異常を感じとる.示指と母指とで挟むようにして硬結を探る(双指診).1) 裂 肛 慢性裂肛はざらっとした特有の感触で触知できる.慢性裂肛口側に肛門ポリープ,下端に見張りイボができるが,この見張りイボは裂肛が存在する目安になる(図1).2) 痔 核 血栓を伴うもの,線維化の著しいものは容易に触知できる.また,ある程度大きな内痔核は肛門管内で指を回すと“ぐにゅっ”とした感触で触知できる.3) 肛門周囲膿瘍,痔瘻 肛門周囲膿瘍は疼痛を伴う波動として触知できる.大部分は発赤・腫脹を伴うので視診も診断の助けになるが,膿瘍が奥の場 血便や腹痛など消化器症状のある患者には肛門・直腸指診を積極的に行おう. 指診の前に症状をよく聞き肛門をよく観察し,痛くないようにゆっくりと丁寧に行おう. 指診のルーチン・ワークを行い,病変を見逃さないようにしよう.図1 見張りイボ写真左が12時方向.6時方向に慢性裂肛による見張りイボ(矢印)が認められる.視診でこれを認めたら裂肛の存在を考え愛護的な指診が必要である.(口絵No.2 p.ii 参照)➡A 検査・治療手技肛門・直腸指診8

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