2135消化器研修ノート
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第4章 研修で学ぶべき知識と技術133検査・治療手技A合,指診が重要となる. 肛門周囲に索状物を触知する場合には痔瘻の瘻管を考える.4) 肛門腫瘍 肛門管に潰瘍と圧痛を伴う硬結を触知する場合,肛門癌を疑う.c 直腸指診……………………………… 示指をさらに深く挿入すると括約筋の緊張を抜け直腸に達する(図2).直腸内は通常,便を認めない.直腸を指診するときは示指を360°回し,直腸の隆起,陥凹,狭窄の有無などを調べる.このとき,指を後方へ回すと肛門と直腸の境界である肛門直腸角を触れる(図2).これは後方で腱のようになった恥骨直腸筋により形成される屈曲である.この部位は後方複雑痔瘻の好発部位であり,正常の感触に慣れておくことが異常の発見につながる.さらに,その外側には肛門挙筋が付着しているので,肛門挙筋の硬さ,圧痛の有無を調べる.示指を最大限奥まで挿入するよう心がける.1) 大腸腫瘍性病変 指診で硬い腫瘤を触知すれば直腸癌と容易に診断できる.この場合,肛門縁からの距離,位置,大きさ,環周度,可動性の有無などを調べる.病変を直接触知しなくても直腸壁を介してS状結腸癌を触れることもある. 慣れてくるとコリッとした粘膜下腫瘍はカルチノイド腫瘍,軟らかいビロビロした腫瘍は絨毛腺腫などと指診で推測できるようになる.2) 直腸周囲膿瘍,深部痔瘻 発熱と肛門痛や臀部違和感を生じるときには,直腸周囲膿瘍や深部痔瘻を考える.この場合,肛門直腸角が鈍になり圧痛を呈する.外側に触診を進め,浅い坐骨直腸窩に硬結があるか(低位坐骨直腸窩膿瘍・痔瘻),深い部位で肛門挙筋に沿うような板状の硬結を触知するか(高位坐骨直腸窩膿瘍・痔瘻)を調べる.3) 直腸瘤,直腸脱 女性で便がつかえるという患者については,直腸内に挿入した示指を腟側に曲げ,直腸腟中隔が脆弱でポケット状になっているかを調べる(直腸瘤). 直腸脱の患者は肛門管の緊張が極端に低下している場合が多く,指診で推測できる.4) 泌尿器科的疾患,婦人科的疾患,その他 直腸指診では直腸周辺臓器の触診もできる.男性では前方に前立腺と精囊があり,前立腺肥大や前立腺癌を念頭に置いて指診する.女性では子宮腟部や子宮後屈を触知できるが腫瘍と誤らないよう注意する.Douglas窩に膿や血液の貯留,あるいは胃癌など悪性腫瘍の転移が認められることがある(Schnitzler転移).図2 肛門周囲の解剖(正中矢状断)矢印の辺りが括約筋間溝である.括約筋間溝は内括約筋下縁と皮下外括約筋により形成される凹みで,通常肛門縁から1 cmほど口側に存在する.①の恥骨直腸筋は後方では腱のようになり肛門直腸角を形成する.①恥骨直腸筋,②深外括約筋,③浅外括約筋,④皮下外括約筋,⑤内括約筋.①②③④①②③⑤痔核など肛門疾患を発見するとそれで満足してしまい奥の直腸癌を見逃すことがある.指を奥まで挿入することを習慣にしよう.Pitfall!
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