2144内分泌代謝疾患クリニカルクエスチョン100
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膵神経内分泌腫瘍(PNET)はホルモン過剰の有無により機能性腫瘍と非機能性腫瘍に分類される.機能性腫瘍は症状から過剰ホルモンを疑い,機能検査,画像検査で診断を行う.治療の第一選択は切除術である.薬物療法として,内分泌症状の緩和にはソマトスタチンアナログ,抗腫瘍効果目的にはエベロリムス,スニチニブが推奨されている. 診断のポイント PNETは膵腫瘍の約1~2%で,年間有病者数は約1人/10万人とまれな疾患である.わが国の実態調査では,機能性腫瘍49.8%,非機能性腫瘍47.7%と頻度はほぼ同じで,機能性腫瘍ではインスリノーマが最も多く,次いでガストリノーマ,グルカゴノーマの順である.機能性腫瘍では症状から過剰分泌ホルモンを疑い,その血中濃度測定と負荷試験で鑑別する(表1)1).MEN1合併の診断は,補正血清Ca濃度測定とintact PTH測定を行う.局在診断には画像検査(CT,MRI,US)や微小病変の診断目的での選択的動脈内刺激物注入試験(SASI)を施行する.ソマトスタチン受容体シンチグラフィも有用であるが,わが国では未承認である.非機能性腫瘍では膵癌との鑑別が重要である.治療のポイント インスリノーマの悪性は約10%であるが,その他のPNETの悪性は50~90%であり原則として悪性疾患と考えて治療する必要がある.切除可能例では外科的切除が治療の第一選択である(表2)2).インスリノーマではリンパ節郭清が不要なことが多いが,その他のPNETではリンパ節郭清は必須である.外科的切除による治癒を目指すのが標準治療であるが,切除不能例では,ホルモン過剰による内分泌症状の改善,腫瘍増殖の抑制による生命予後の改善を目的とした治療を行う.内分泌症状の緩和にはソマトスタチンアナログが各PNETに有効である.また,インスリノーマによる低血糖発作の抑制にはジアゾキシド,ガストリノーマの潰瘍には高用量のプロトンポンプ阻害薬,グルカゴノーマによる遊走性壊死性紅斑には………………165Chapter 7多腺性・遺伝性内分泌疾患Chapter 7 多腺性・遺伝性内分泌疾患97膵神経内分泌腫瘍(PNET)の診断と治療法のポイントは?機能性PNETの症状と診断疾患名主な症状過剰ホルモン血液検査局在診断インスリノーマ混迷,発汗,動悸,意識障害インスリン血中インスリン濃度,72時間絶食試験,グルカゴン試験US,CT,MRI,EUS,SASI(カルシウム)ガストリノーマ腹痛,胸焼け,下痢,潰瘍ガストリン血中ガストリン濃度,カルシウム静注試験,セクレチン静注試験US,CT,MRI,EUS,SASI(セクレチンorカルシウム)グルカゴノーマ壊死性遊走性紅斑,舌炎,体重減少グルカゴン血中グルカゴン濃度,血中アミノ酸濃度US,CT,MRI,EUSVIP産生腫瘍水様性下痢,脱水,皮膚潮紅VIP血中VIP濃度,便osmotic gap*US,CT,MRI,EUS*便osmotic gap:便浸透圧-(便中Na+便中K)×2 分泌性下痢,浸透圧性下痢の鑑別に有用.US:超音波検査,EUS:超音波内視鏡検査,SASI:選択的動脈内刺激薬注入法.表1

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