2154EBウイルス 改訂第3版
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2 EBウイルス(EBV)は1964年にEpsteinらによりBurkittリンパ腫培養細胞中に見出され,ヒトがんウイルス第1号として注目された(図1).外科医Burkittによるアフリカ赤道地域小児に多発するリンパ腫の発見,その地域偏在性から病因としてのウイルスを探求した末の発見であった.その後のHenleらを中心とする疫学研究の結果,EBVが大部分のヒトに感染していることが明らかとなった. EBVはヘルペスウイルス科に属し,約170 kbpの2本鎖DNAをゲノムとしてもつ.EBVは80余りの遺伝子をコードしており,潜伏感染遺伝子(latent gene)と溶解感染遺伝子(lytic gene)に分けられる.EBVはBリンパ球に発現するCD21を吸着レセプターとし,Bリンパ球を主たる感染標的とする.その他に,Tリンパ球,上皮細胞へも感染するが,これらの細胞への感染はCD21を介する経路と,CD21以外の分子をレセプターとする経路がある.また,EBV感染リンパ球との接触(cell—to—cell感染)は上皮細胞への感染効率を著しく高める. EBVは一般には唾液を介して感染する.EBVは口腔咽頭領域のBリンパ球へ直接感染する.EBVの初感染像である伝染性単核症はEBV感染Bリンパ球に対する過剰免疫反応であり,免疫系の発達が未熟な乳幼児期の感染では無症候性に終わることが多い.顕性,不顕性を問わず初感染の後にEBVに対する免疫が確立されるが,EBVはメモリーBリンパ球中で免疫の標的となるウイルス抗原を発現しない潜伏感染状態となり,終生にわたり維持される.潜伏感染状態からのEBVの再活性化は頻繁に起こり,口腔咽頭内の上皮細胞での増殖を経て唾液中へ排泄される. EBVはBリンパ球を不死化細胞へトランスフォームする活性がある.In vitroの至適な条件下ではほぼ100%のBリンパ球で感染が成立する.トランスフォームリンパ球はウイルス産生のない潜伏感染状態にあり,発現しているEBV遺伝子産物は核抗原EBNA(EBNA—1,EBNA—2,EBNA—3A,EBNA—3B,EBNA—3C,EBNA—LPの6種類),膜蛋白質(LMP1,LMP2A,LMP2Bの3種類),蛋白質に翻訳されないsmallRNA(EBER1, EBER2),BamHI—A断片領域にコードされるBARTs,microRNAである.この内,EBNA—1は感染細胞内でのEBVプラスミドの維持,EBNA発現の制御,LMP1,EBNA—2,EBNA—3A,EBNA—3Cはトランスフォーメーションに必須であり,EBNA—LP,EBERが欠失するとトランスフォーム効率が低下する.EBNA—3B,LMP2A,LMP2Bはトランスフォーメーションに不要である. 表1に代表的なEBV関連がんにおけるウイルス発現を示す.これらはいずれもウイルス産生のない潜伏感染状態にある.EBV発現パターンはⅠ型,Ⅱ型,Ⅲ型の3種類に分けられる.Ⅲ型はトランスフォームリンパ球と同じパターンであり,エイズや臓器移植後のリンパ増殖症やリンパ腫で概要EBウイルス感染の概要図 1 EBVの発見者Epstein卿

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