2159難治性内分泌代謝疾患UpDate
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Ⅱ 各論編86●●●疾患概念 原発性アルドステロン症(primary aldosteronism,PA)は副腎からアルドステロンが過剰に分泌される結果,腎尿細管からのナトリウム・水再吸収の増加による循環血漿量増加,高血圧を呈するととともに,腎からのカリウム排泄による低カリウム血症を示す.一側性のアルドステロン産生腺腫(aldosterone producing adenoma;APA)と両側性の過形成を呈する特発性アルドステロン症(idio-pathic hyperaldosteronism;IHA)が代表的病型であるが,両側性腺腫,一側性過形成,家族性高アルドステロン症(グルココルチコイド反応性高アルドステロン症など)などの非典型的な病型もある.一側性病変では副腎摘出,両側性病変では薬物治療が原則である.疫学1高血圧に占める頻度 高血圧の1%以下と報告されていたが,近年,PAC/PRA比(ARR)によるスクリーニングにより,約3~10%1)とされていることから,最大で400万人程度と推定される.一方,厚労省研究班の全国調査では年間1,500人程度と報告2)されており,頻度は大きく異なっている.調査の施設,スクリーニング法,診断方法によるバイアスの影響が大と思われる.PA全体の頻度は高いが,重症度の高いAPAはその10%以下で,患者数は5万人以下と考えている.2標的臓器障害の頻度 標的臓器障害(脳:脳出血,脳梗塞;心血管系:心肥大,心筋梗塞,心房細動その他の不整脈;腎臓:微量アルブミン尿)などが本態性高血圧の数倍であると報告3)されている.わが国では厚生省研究班の報告でも,APAでの脳出血の合併頻度が本態性高血圧と比較して,有意に高いことが報告4)されている.高血圧,低カリウム血症の影響に加えて,アルドステロンの心血管系への直接作用が関与すると報告されている.診断基準 PAの診療ステップは,①スクリーニング,②機能確認検査,③局在・病型診断,④治療方針の❶ アルドステロンの自律性過剰産生をきたす疾患で,アルドステロン産生腺腫と特発性アルドステロン症が主要な病型である.❷ 高血圧,低カリウム血症,アルドステロンの直接作用による標的臓器障害の頻度が高い.❸ 診療ガイドラインによりスクリーニング,機能確認検査,病型・局在診断,治療選択が診療の基本プロセスと決められているが,詳細はガイドライン間で差を認める.❹ 診療の質の向上,標準化が国内外で喫緊の課題となっている.❺ 原発性アルドステロン症全体の疾患頻度は極めて高いが,重症型といえるアルドステロン産生腺腫は難病・指定難病の要件を充たすと考えられる.Point1図 PA診療の基本プロセススクリーニング機能確認検査局在診断AVS治療の選択1)国立病院機構京都医療センター内分泌代謝高血圧研究部,2)国立国際医療研究センター病院糖尿病内分泌代謝科 成瀬光栄1),立木美香1),馬越洋宜1),難波多挙1),田辺晶代2)原発性アルドステロン症7第4章 副 腎指 定難 治

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