2159難治性内分泌代謝疾患UpDate
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Ⅱ 各論編88●●●3機能確認検査 アルドステロンの自律性かつ過剰分泌を確認する機能検査である.カプトプリル試験,生食負荷試験,フロセミド立位試験,経口食塩負荷試験などがある.JSH,ESでは少なくとも一種類の検査陽性としているが,JESでは2種類の検査陽性の場合にPAと確定診断するとしている.海外ではフロセミド立位試験は使用されていない.また,ARRとPACが高値の場合(ARR>1000,PAC>250 pg/mL)には必ずしも機能確認検査は必要でない8).4病型・局在診断 治療方針決定のため,病変が一側性(APA)か両側性(IHA)かの診断を行う.副腎CTが基本であるが,腫瘍が小さく約70%では腫瘍を確認できないこと,また,確認できた腫瘍が非機能性である可能性があることから,手術実施に際しては副腎静脈サンプリング(AVS)が推奨される.しかし,AVSの技術的課題があるのに加えて,実施方法,判定基準が標準化されていない9).JSHではAVSの実施を総合的に判断することとしているが,JESでは手術適応に際して必須としている.ESでは35歳以下の典型例ではAVSをスキップ可能としている.治 療 一側性病変では腹腔鏡下副腎摘出術が第一選択である.術後,病態の改善を認めるが,治癒率は約50%以下で,高血圧やCKDが遷延する例がある.手術を希望しない例や両側例ではMR拮抗薬を主とする薬物治療を行う.正常カリウム例においてもMR拮抗薬が予後の面で有用かのエビデンスは未確立である.今後の展望1臨床的課題 ①治療抵抗性高血圧の重要な原因(約20%を占める)であり,②脳・心血管・腎合併症が高頻度であることから,早期の適切な診断が必要であるが,③約70%がCT陰性の微小腺腫であるため,④局在診断に侵襲的検査であるAVSが必要である.さらに,一側性のAPAと診断されても,⑤術後の治癒率は<50%と低く,長期の継続治療が必要となる.2新難病法における位置付け 従来よりPAは難治性疾患克服研究事業「副腎班」における調査研究対象として位置付けられてきたが,行政的取り組みにおける難病の概念の変遷とPA診療の進歩に伴う患者数の増加に伴い,難病が否かは議論が分かれる.PAの実態が難病,指定難病の定義に該当するかを表2にまとめた.軽症かつPAの多くを占めるIHAは難病の定義に合致しないと考えられるが,APAを主とする重症型(治療抵抗性例,心血管系イベント合併例,術後非治癒例などを含む)は難病,さらに指定難病の定義に合致すると考えている.3今後の課題 今後,診療水準の向上に資する質の高いエビデンス構築により,①診療ガイドラインの統一,標準化を行う必要があると共に,②難病,指定難病の要件に合致するか否かの判断を,専門的見地から行う必要がある.文 献 1) Shimamoto K, et al.:Japanese Society of Hypertension Committee for Guidelines for the Management of Hypertension. The Japanese Society of Hypertension guidelines for the management of hypertension(JSH 2014). Hypertens Res 2014. 37(4):253-387. 2) 厚生労働省難治性疾患克服研究事業 「副腎ホルモン産生異常に関する調査研究」平成24年度 総括・分担研究報告書,平成25年 3) Milliez P, et al.:Evidence for an increased rate of cardiovascular events in patients with primary aldosteronism. J Am Coll Cardiol 2005;45(8):1243-1248. 4) Takeda R, et al.:Vascular complications in patients with aldosterone producing adenoma in Japan:comparative study with essential hypertension. The Research Committee of Disorders of Adrenal Hormones in Japan. J Endocrinol Invest 1995;18(5):370-373. 5) Funder JW, et al.:Endocrine Society. Case detection, diagnosis, and treatment of patients with primary aldosteronism:an endocrine society clinical practice guideline. J Clin Endocrinol Metab 2008;93:3266-3281. 6) Nishikawa T, et al. :The Japan Endocrine Society. Guidelines for the diagnosis and treatment of primary aldosteronism--the Japan Endocrine Society 2009. Endocr J 2011;58:711-721. 7) Tanabe A, et al.:Variability in the renin/aldosterone profile under random and standardized sampling conditions in primary aldosteronism. J Clin Endocrinol Metab 2003;88:2489-2494. 8) Nanba K, et al.:Confirmatory testing in primary aldosteronism. J Clin Endocrinol Metab 2012;97:1688-1694. 9) Rossi GP, et al.:The Adrenal Vein Sampling International Study(AVIS)for identifying the major subtypes of primary aldosteronism. J Clin Endocrinol Metab. 2012;97:1606-1614.2表 難病と指定難病の定義とPAの実態要件PA軽症・中等症(IHAなど)重症型(APAなど)①発病機構が不明〇〇②治療法が未確立×~△△③長期の療養必要〇〇④希少な疾患(人口の0.1%以下)×△⑤客観的な診断基準が確立〇〇難病の定義:①+②+③+④(患者数の規定なし)指定難病の定義:難病の定義+④(人口の0.1%以下)+⑤
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