2166基礎疾患をもつ小児に対する予防接種ガイドブック
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10710. 熱性けいれんの既往基礎疾患をもつ小児への予防接種対応ガイド◦ 第 4 章かん放電が特に前頭部にみられると,将来てんかん発症のリスクが高くなると報告しています8).一方で,Pavlidouらは,脳波異常の有無で将来のてんかん発症率に差はなかったと報告しており9),結論は定まっていません.2015年に発表された日本小児神経学会の「熱性けいれん診療ガイドライン」策定委員会による「熱性けいれん診療ガイドライン2015」においても,単純型熱性けいれんの診療一般として,脳波検査を行う必要はないと推奨しております6).さらに,複雑型熱性けいれんにおいてはてんかん放電の検出率が高いと報告されていますが,先述の通り,その臨床的意義は確立されていません6).以上により,熱性けいれんに対してワクチン接種の実施に際し,脳波検査を行うことでワクチン接種のリスク評価はできず,推奨されません.Q3 けいれん重積の既往のある児に対してワクチン接種を行う際,注意すべき点を教えてください.接種後発熱に伴う熱性けいれん再発が再び重積発作状態になる可能性を考慮して,対応を行う必要があります.熱性けいれん重積状態とは,従来30分以上と定義されることが多かったですが,治療開始の判断の目安を考慮し,より短い時間と考えられるようになってきています.2015年に発表された「熱性けいれん診療ガイドライン2015」でも,発作が5分間以上持続している場合を薬物治療の開始を考慮すべき熱性けいれん重積状態のoperational definition(実用的定義)とすることが提案されています6).重積発症時には脳炎・脳症など重篤な他疾患との鑑別を要しますが,原因が熱性けいれんであればその短期予後は良好です.一方,熱性けいれん重積状態により頭部MRIで海馬の高信号がみられることがあり,将来の側頭葉てんかん発症との関連が指摘されており10)11),その長期予後は必ずしも良好とは限りません.したがって,熱性けいれん重積状態の既往がある場合は,以下に述べるような具体的な対応を検討しておく必要があります.① ワクチン接種後の発熱に際するけいれん予防ジアゼパム坐薬による予防を確実に行う必要があります.発熱時のジアゼパム予防投与に関しては以下のQ4に基準を示している通り,遷延性発作の既往はそれ単独で一度でもあれば適応基準に合致します6).② けいれん重積状態が発症してしまった場合の対応「熱性けいれん診療ガイドライン2015」においては,以下の治療薬が第一選択薬として推奨されています6).いずれも,呼吸抑制に注意が促されています.・ミダゾラム静注:0.15mg/kg・ジアゼパム静注:0.2~0.4mg/kg・ 静脈ラインが確保できない場合は,ミダゾラムの鼻腔・口腔内投与や筋注,ジアゼパム(液剤)の注腸も考慮されるこれらの処置ができない場合,あるいは,行っても十分にけいれん抑制ができない場合は,直ちに二次病院へ搬送する必要があります.A3
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