2169日常診療における子どもの睡眠障害
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大阪大学大学院連合小児発達学研究科谷池雅子第4章訴えからのアプローチ3乳幼児の不眠不眠が遅寝遅起,レストレス・レッグズ症候群(restlesslegssyndrome:RLS),など複数の要因で生じている場合が多いので,実際の診療はお示しするフローチャート(図1)よりも複雑であることをはじめに強調したいと思う.外来診療上重要なことは,「乳幼児の不眠」の訴えによる受診は,当該の乳児と養育者からなる複合要因であるということ.子どもの睡眠について,十分な知識をもたない養育者にとっては,夜何度も目覚める乳幼児の睡眠は病気と誤認される可能性があるだろう.また,ある養育者にとっては耐え忍ぶことができる入眠困難や中途覚醒であっても,メンタルヘルスに問題を抱える養育者にとっては不適切な養育につながりかねない.したがって,ケースバイケースで判断すべきで,養育者に余裕がまったくないと判断された場合には,緊急避難的に眠剤を投与せざるをえない場合もあり,逆に心理教育のみで不眠が改善したケー不眠の訴え就寝時刻が22時以降SOL*≧30分または,中途覚醒≧2回/夜RLSの症状・家族歴発達障害の疑い養育者に余裕があるか?養育者が抑うつ的,または,強度の育児困難を訴える*SOL:入眠潜時=就寝から入眠までの時間図1乳幼児の不眠の診断フローチャート(可能であれば睡眠・覚醒リズム表を用いて)就寝・入眠・覚醒時刻,中途覚醒回数の確認質問票を用いて閉塞性睡眠時無呼吸症候群の否定(夜間の外出や就寝前のテレビを減らし,昼間の陽光を浴びるなど)睡眠相後退に対する指導経過観察地域と連携して育児支援乳児行動性不眠症の疑い心理教育行動療法眠剤の使用(メラトニン,ラメルテオン,クロニジンなど)RLS治療(鉄剤から)睡眠時間・睡眠衛生の確認と指導YESYESNONONOYESNONONOYESYESYES3乳幼児の不眠165
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