2171眼科開業医のための診療・連携ポイント30
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74 糖尿病網膜症(DR)Ⅰかかりつけ医でできる検査と治療❶視力・眼圧・眼底検査などの一般的眼科検査❷1年に1回は眼底写真撮影❸糖尿病に関する患者教育1一般的眼科検査 視力:糖尿病患者では,角膜症,白内障,虹彩炎など,DR以外の合併症でも視力低下が起こることがある.本人が自覚しない視力の変化を知るには,かかりつけ医での視力検査が力を発揮する.異変に気づくのは,やはりかかりつけ医である. 眼圧:受診時には,毎回眼圧検査が必要である.非増殖DR患者であっても,頸動脈狭窄(閉塞)により眼虚血症候群を起こすと急速に隅角新生血管,虹彩ルベオーシスを引き起こすことがあり,眼圧異常で気づくことがある.また,増殖DR患者では,ときどき,非散瞳下で虹彩,瞳孔縁を確認し,ルベオーシスの見落としを防ぐ.2想像以上に有用な眼底写真撮影! 定期的に眼底写真が撮影されていると,病状の進行を振り返ることができる.眼底出血の始まりとその進行や黄斑部近くの出血や硬性白斑の状況は,病状の変化の把握のために有用である.1年に1回でも眼底写真が撮影されているとよい.3オーダーメイドの患者教育 定期的通院や治療のためにマイナスとなる患者の家族背景,経済状況などを把握し,さらに患者のキャラクターなどを知ることにより,定期的通院の必要性や,糖尿病の治療,血糖コントロールの重要性を教育したい.13糖尿病網膜症(DR)糖尿病網膜症の病診連携は,里親制度!東京逓信病院眼科  善本三和子糖尿病網膜症(DR)の成因はA, B, and C 糖尿病網膜症(DR)では,長期間の高血糖により,A:網膜血管壁の異常(透過性亢進,毛細血管瘤の形成),B:血管内凝固が起こり,その結果としてのC:網膜虚血が引き金となり,眼内新生血管,増殖膜などの増殖組織が作られる.やがて新生血管や増殖膜の組織収縮などにより,硝子体出血や網膜剝離が起こり,それを放置すると失明する.また糖尿病黄斑浮腫は,黄斑部血管の透過性亢進,硝子体の牽引の結果として起こる.これらの病態には,多くのサイトカインがかかわっており,なかでも血管内皮増殖因子(VEGF)との関連が強い.

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