2171眼科開業医のための診療・連携ポイント30
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76 糖尿病網膜症(DR)3硝子体出血は精査のきっかけ 経過観察していたDR患者に,硝子体出血が起きた場合,紹介する.新生血管がかかわる場合とそうでない場合があるが出血量が多くなければ,フルオレセイン蛍光眼底造影(FA)を行えば,多くは原因が判明する.また出血量が多く,眼底透見が不可能な場合は,僚眼の網膜症の状態が参考になる.出血量の多い硝子体出血では,手術治療を念頭に経過観察が必要である. 網膜光凝固治療の既往の有無によっても,その緊急性は異なる.網膜症未治療患者に起こった濃厚な硝子体出血は,早期の硝子体手術が必要になることがある.さらに,網膜裂孔による硝子体出血もあり得るので注意が必要である.Ⅲ紹介時の説明ポイント❶病気の原因は糖尿病❷治療の基本は,血糖コントロール❸病態に合わせて治療法を選択1原因は糖尿病であることを忘れずに! DRの治療を始めると,糖尿病が原因であることを忘れてしまう患者が少なくない.かかりつけ医から専門医に紹介するときには,病気の根本原因は糖尿病であることを再度説明する.通院先が変わっても,糖尿病の治療を継続することが理解できていれば,専門医による治療もスムーズとなる.2今だけでなく将来を左右する血糖コントロール 糖尿病の治療,さらにはDRの治療の基本も,血糖コントロールであることを常に認識させる.「今の網膜症は今の血糖コントロール状態を反映しているわけではなく,何年も前の血糖コントロール状態を反映している」という説明をすることがあるが,これには追加説明が必要である.なぜなら「以前の血糖が悪くて今,目がみえなくなっているなら,もう今は血糖値をよくしても仕方がないのだ」と考える糖尿病患者は少なくないからである.今の血糖コントロールを改善することは,数年後の網膜症の状態をよくする,また今後の網膜症の進行スピードを遅らせることができる,ということを患者に説明しておきたい.3複数の治療法から選択.「1回では終わりませんよ」 DRの治療は,病期により,検査や治療法が異図3 かかりつけ医から専門医紹介時の眼底写真52歳 男性:20年前に尿糖指摘されるも放置.視力低下にてかかりつけ医受診.かかりつけ医より専門医に,「今日受診させなければ,受診しないと思いますので,よろしくお願いします」と電話あり.HbA1c 12.6% 尿蛋白2+図4  専門医からかかりつけ医へ戻るときの眼底写真(図1の1年後)HbA1c 6.2% 腎機能障害進行中 今後透析導入予定.「硝子体出血が起きたり,黄斑浮腫などで視力が低下したときは,もう一度再紹介をお願いします」

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