2172骨・軟部腫瘍-臨床・画像・病理 改訂第2版
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166*第2章 骨腫瘍1概 念骨髄内に線維性組織の増殖と未熟な線維性骨よりなる骨梁を伴う病変で,1つの骨に限局するもの(単骨性)と多数の骨に発生するもの(多骨性)とがあり,単骨性のものの頻度が高い.多くは無症状であるが,病変が大きくなると骨の膨隆や変形をきたし,大腿骨頸部などの荷重部では病的骨折を起こすことがある.女児で多骨性病変,皮膚の色素沈着と性早熟などの内分泌異常を伴ったものはAlbright症侯群と呼ばれる.また多発性筋肉内粘液腫に多骨性病変を伴ったものはMazabraud症侯群と呼ばれる.2疫 学年齢は10代までが多く,男女比では女性にやや多く認められる.多骨性の症例は単骨性の症例に比較して年齢が低い.発生部位では大長管骨に多く,その中でも大腿骨頸部の頻度が高い.大長管骨以外では肋骨,顎骨および頭蓋骨にも多く認められる.肋骨発生例の平均年齢は,他の発生部位例の年齢に比較して高い.3画像診断a)単純X線写真,CT:溶骨性病変,無構造なすりガラス状病変(図1),不整な石灰沈着や骨硬化性病変を示す1).大きな病変ではこれらが混在し,多彩な像を呈することが多い(図2a).骨髄内から膨脹性に発育し,骨皮質は菲薄化する.病変の辺縁にしばしば太い硬化縁(rind sign)を認めるが,硬化縁が欠如することもある.長管骨では骨幹端と骨幹に発生し,骨端へは成長板閉鎖後に骨幹端から伸展する.長管骨では,しばしば病的骨折を合併する.病的骨折がなければ,骨膜反応を認めることはない.微小骨折を繰り返すことで前腕や下腿では弯曲変形,大腿骨近位部では羊飼いの杖変形(shep-herd’s crook deformity)をきたすことがある.頭蓋冠では板間層を開大させる.外板が膨隆し,基本的に内板が頭蓋内に膨隆することはない(図3).頭蓋底と顔面骨ではすりガラス状ないし骨硬化性に膨脹することが多い.肋骨に発生する良性骨腫瘍の中で最も頻度が高い(図4).b)MRI:T1強調像では低信号あるいは中等度信号を示し,T2強調像では多彩な病理組織像を反映して信号も不均一である.石灰沈着の強い領域では低信号,嚢胞変性を示す領域では強い高信号を示す(図2b).造影剤による増強効果も多様で,斑状中心,辺縁性,均等性あるいはこれらの混合型を示す2).c)その他の画像所見:Tc-99mMDP骨シンチグラフィにて強い集積を認める.他の目的で検査を行い,偶発的に発見されることがある.多骨性線維性骨異形成で病変の分布を知るのに役に立つ.d)画像上の鑑別診断:骨線維異形成(osteobrous dys-plasia),Langerhans細胞組織球症,骨嚢腫,軟骨粘液線維腫,動脈瘤様骨嚢腫,骨Paget病,メロレオストーシス,内軟骨腫,骨芽細胞腫,転移性骨腫瘍,骨内高分化型骨肉腫.4病理診断a)肉眼像:肉眼的には灰白色のざらざらした感じの病変で,硬さはスポンジ様から線維性硬まで様々である.泡沫細胞を含む場合は黄色調を呈し,変性の強い場合は囊胞形成を伴う.b)組織像:組織学的には線維性組織を伴った紡錘形細胞の増殖と幼弱な線維性骨の形成が基本像である.線維性骨は“C”または“Y”-shapedと呼ばれるゆるやかに弯曲した骨梁よりなり,典型例では骨芽細胞による縁取り(rimming)はない(図6).紡錘形細胞には細胞異型を認めず,核分裂像も通常はまったく認められない.紡錘形細胞の細胞密度は非常に低いものから高いものまで様々であり,細胞密度が高い場合は骨内高分化型骨肉腫との鑑別が問題となる(図7).骨梁は通常は線維性骨であるが,層状骨であることもあり,特に顎骨発生例ではその傾向が強い.骨梁は特に顎骨発生例では,球状あるいは砂粒体(psammoma body)様の形状を呈しセメント質骨形成線維腫(cemento-ossifying broma)に類似した像を呈する(図8).長管骨発生例にも球状の石灰化物を認めることがあり線維性骨異形成とセメント質骨形成線維腫新生物としての性質が不確定な腫瘍群:A 良性腫瘍10小田義直/福田国彦/木村浩明・大塚隆信2線維性骨異形成Fibrous dysplasia

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