2172骨・軟部腫瘍-臨床・画像・病理 改訂第2版
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4*第1章 総 論1)比較的活動性の低い病変でみられる骨膜反応 骨皮質の肥厚(solid type periosteal reaction)は,平滑ないし波状の骨膜骨形成である.この骨膜反応は類骨骨腫や骨折の治癒過程のような良性病変でよくみられる.骨皮質の膨脹(cortical expansion)は,一定の速さで骨髄側の骨皮質吸収が行われると同時に骨膜骨形成が行われた時にみられる.したがって動脈瘤様骨嚢腫のような局所侵襲性骨病変や形質細胞腫のような活動性の低い悪性骨腫瘍でみられる.2)侵襲性の高い骨膜反応 多層性あるいはタマネギの皮状(onion skin)骨膜反応は,骨髄内で反復性障害が起きたことを意味する.連続性が不規則で薄層の骨膜反応は,Ewing肉腫や骨肉腫のような侵襲性の高い骨腫瘍でみられる.一方,規則的で厚い骨膜骨は,被虐待児症候群のような反復性骨膜刺激でみられる. スピクラ(spiculated)や陽光状(sunburst)骨膜反応は,血管に富む悪性腫瘍でみられる.骨膜を骨皮質に接合するSharpey線維に沿って,骨膜骨形成が積み木のように形成されたもので,その間に豊富な血管が介在する.通常,Ewing肉腫や骨肉腫のような富血管性悪性骨腫瘍でみられるが,頭蓋骨に発生した血管腫でもみられることがある.その場合,前者はスピクラが繊細,後者はスピクラが太い(図4)のが特徴である. Codman三角は病変の辺縁部における,骨皮質と骨膜接合部の三角形をした骨膜反応で,病変が骨皮質を穿破し骨外に進展したことを示す.骨肉腫のような悪性骨腫瘍でみられるが,壊血病や被虐待児症候群の骨膜下出血でもみられることがある.d)病変の大きさと形状1)大きさ 初診時に最大径が6 cm未満のものは,良性病変の可能性が高いといわれる.6 cmを超えたものは悪性腫瘍と良性病変が混在する3).2)形 状 病変の形も良性病変と悪性病変を鑑別する手掛かりとなることがある.病変の形状が発生母地となった骨の形状と似ていれば,骨の成長過程とともに病変が共存していた可能性が高く,良性病変を示唆する.例えば,長管骨の骨幹病変が,長軸方向に細長い形状をしていれば,長期間にわたり病変が存在していたことを示唆する.一方,形状が円形や膨隆性であれば,活動性病変であることを示唆する.2特異的診断の手がかりa)年齢,性1)年 齢 年齢も骨腫瘍の診断に非常に重要である.例えば,長管骨骨幹の浸透状骨破壊は,小児ではEwing肉腫の可能性が高く,成人では悪性リンパ腫が鑑別にあがる.膝周囲骨幹端の侵襲性骨破壊は,思舂期であれば骨肉腫の可能性が高く,40歳以上の中高齢者では転移性骨腫瘍の可能性が高い.代表的な骨腫瘍の好発年齢を示す(表1).2)性 大部分の骨腫瘍および骨腫瘍類似病変は,男性優位に発生する.特に骨肉腫,Ewing 肉腫,類骨骨腫,骨芽細胞腫,脊索腫,単純性骨嚢腫,Langerhans細胞組織球症,骨Paget病は男性に好発する.b)病変の発生部位1)全身骨の中での好発部位(表2) 生下時には造血髄は全身骨に分布するが,成長とともに四肢骨は造血髄から脂肪髄に転換する.成人になると造血髄は頭蓋骨,脊椎,肋骨,胸骨からなる軸骨格(ax-ial skeleton)に限られる.そのため,小児に好発するEwing肉腫は四肢骨と軸骨格のいずれからも発生するが,中高齢者に好発する転移性骨腫瘍や多発性骨髄腫は軸骨格に発生することが多い.〈図3〉骨膜反応の分類(文献2より改変引用)Codman三角陽光状スピクラ多層性骨皮質の膨張骨皮質の肥厚単層性}}

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