2172骨・軟部腫瘍-臨床・画像・病理 改訂第2版
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14*第1章 総 論濃度分解能に優れるものの,組織コントラストに多因子が関与するMRIには及ばない.また,MRIは関与する因子の中から特定因子を強調した画像(T1強調像,T2強調像,水強調像,拡散強調像など)や抑制した画像(脂肪抑制画像,水抑制画像など)を得ることが可能で,これらの組み合わせなどから組織特異性に迫れることがある.II 骨腫瘍単純X線写真に続いて行われる検査はMRIであることが多い.しかし,検査へのアクセスのよさ,骨や石灰化の描出能の高さから,単純X線写真で判断に迷う骨破壊や石灰化を正確に評価する目的でCTが行われることも多い.1存在診断と局在診断 CTは,重なりのない断層画像であることから,解剖学的に複雑な部位の評価に適している.これらの部位では必要に応じて,評価に適した断層面のMPRが作製される.類骨骨腫のnidusは単純写真で同定しにくいことがしばしばある.薄層CTはその検出に有用である(図5).2侵襲性の評価:骨破壊,骨膜反応,骨外腫瘤 骨腫瘍の侵襲性を評価する指標は単純X線写真に準じる.骨破壊は地図状,虫食状,浸透状に分類され,地図状骨破壊はさらに辺縁の性状からType I A, Type I B, Type I Cの3亜型に分類される. 石灰化成分の描出に優れるため,軽微な骨膜反応の検出や骨膜反応の性状評価が可能である.MPRにより任意方向の骨膜反応の広がりと性状を知ることができる.また,骨皮質破壊と骨外進展した軟部腫瘤の描出に優れる.骨組織と軟部組織の評価には,それぞれに適した画像再構成アルゴリズムを使用した画像データ作製が必要である.フィルム環境下ではさらに適正な骨条件と軟部条件での画像表示が必要であったが,モニター診断では読影者が適正条件にして読影を行う.骨外腫瘤の血管神経束との関係の評価では,基本的に造影剤投与が必要である.3腫瘍の内部性状 骨腫瘍の石灰化パターンの解析は単純X線写真のような重なり像がないため容易で,骨形成性腫瘍と軟骨性腫瘍の鑑別診断に役立つことがある(図6).単純性骨嚢腫に病的骨折を合併した症例では液面形成や荷重部へ沈降した骨片を認めることがあり,動脈瘤様骨嚢腫や動脈瘤様骨嚢腫変化の合併症例では多数の液面形成を認めることがある1).骨腫瘍の充実成分と嚢胞成分の識別には基本的に造影検査が必要である.4転移性肺腫瘍の検索 肺は原発性悪性骨腫瘍の転移が最も多い臓器である.CTは単純X線写真では捉えられない早期の転移性肺結節を確実に捉えることができる2).〈図4〉22歳の女性.悪性末梢神経鞘腫瘍(MPNST),NF1の患者,CT血管撮影(CTA).(a)造影CT早期相.左鼠径部の浅大腿動脈と深大腿動脈の前方に大きな軟部腫瘤を認める.早期相において大腿動脈側の軟部腫瘤内に増強効果がみられる.(b)CTA.造影CT早期相画像から骨を消去した上で作製されたMIP像.浅腸骨回旋動脈,大腿回旋動脈,深大腿動脈,浅大腿動脈から栄養血管が増生している.ab

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