2174眼科研修ノート 改訂第2版
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425予防医学I 眼科学は眼科疾患学,眼光学,そして眼科予防医学を扱う学問である.現在,予防医学には様々なアプローチがあるが,そのなかでも“加齢”に焦点を当てたアンチエイジング医学(抗加齢医学)が注目を集めている. 本項では眼科疾患の予防医学として,これからさらに重要になると考えられるアンチエイジング医学のサイエンスを紹介する.アンチエイジング医学とは加齢という生物学的プロセスに介入を行い,動脈硬化や糖尿病,癌のような,加齢に伴う疾患の発症確率を下げ,健康長寿をめざす医学である.眼科の疾患でも加齢黄斑変性,白内障,緑内障,ドライアイ,老視など,多くの疾患が加齢をリスクファクターとする疾患である.後期高齢者医療制度の導入にみられるように,現在,高齢者の健康保持が国家的な課題となっており,個人の幸福という観点からばかりでなく,アンチエイジング医学は社会の経済効率を考える上でも重要と考えられる.これまで日本の健康政策は,病気になったら国民皆保険がこれを守りますという“疾病治療型”の医学が中心であった.ところが病気になってから治していたのでは費用がかかりすぎ,健康保険は破綻することが確実となってきた.そこで近年,予防医学の重要性に光が当てられている.アンチエイジング医学は“加齢”に焦点を当てた究極の予防医学である.予防医学を考えるときに,最も中心的な医学となる可能性を秘めた医学といえよう.1アンチエイジング医学発展の背景 アンチエイジング医学が注目されてきた背景には,エイジングのサイエンスの進歩がある.1980年頃までは,加齢のプロセスは非常に複雑で,とても介入など不可能であると思われていた.しかし近年になり,加齢は神秘のベールのなかの避けられないものではなく,細胞生物学的なプロセスの一つであることがわかってきたことから,介入の可能性があると考えられるようになってきた(図1).複雑な加齢のメカニズムがすべて解明されたわけではないが,次第に情報が整理され,加齢に大きく関与するいくつかの分子機構が認められつつある.なかでも現時点において,カロリーリストリクション仮説と酸化ストレス仮説は多くの研究者に支持される理論となっており,臨床的に応用可能な情報も生まれてきている. すなわち,現時点の医学レベルでのアンチエイジング的アプローチは,理論的には可能であり,その実践が模索されている状態といえる.アンチエイジング医学はあくまでサイエンスに基づいて行われるべきと考え,本書ではかなり詳しく基礎的な医学も網羅した.本項では最も基本となるサイエンスについて述べる.DOs アンチエイジング医学は究極の予防医学である. 科学的理論をもって注目される「カロリーリストリクション仮説」と「酸化ストレス仮説」. 加齢を背景とする疾患の発症確率を減らして健康長寿を実現する,新しい医学の価値が高まっている.I 予防医学アンチエイジング医学のサイエンス1

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