2176膠原病・リウマチ・アレルギー研修ノート
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56 免疫細胞は多様な免疫受容体を発現することで,多種多様な成分を認識し,適切な免疫応答の方向性を決定する.自然免疫系の受容体は異物の特徴をすばやく認識して応答し,その後獲得免疫系の特異的な受容体が異物を認識することで免疫応答が強化される.獲得免疫系は異物(抗原)に対する記憶を有し,再度異物が侵入した場合には強く迅速な応答が惹起される.1自然免疫系による異物認識機構 自然免疫系に含まれる好中球やマクロファージ,樹状細胞などの貪食細胞がもつ受容体は,病原体がもっている共通成分で自己の細胞はもっていないものを認識する.これらの共通の構造は病原体関連分子パターン(pathogen-associated molecular patterns:PAMPs)とよばれ,一方受容体はパターン認識レセプター(pattern-recognition receptors:PRRs)とよばれる.あらかじめ決まった形の受容体を発現しているため,即座に感染に反応できる.異物の認識後,サイトカインの産生や貪食などを誘導し,また抗原提示能を増強することで獲得免疫系を惹起する.上述の外来成分に加え,自己成分が異物,すなわちダメージ関連分子パターン(damage-associated molecular patterns:DAMPs)として認識されることもあり,炎症や組織修復を誘導する.PRRsは,おもに以下に示す4つのファミリーに分類される(図1).a Toll様受容体(Toll-like receptor:TLR)……………………………………… ハエの真菌受容体Tollに類似した受容体ファミリーであり,細菌の細胞壁成分やウイルス由来の核酸などを認識する.これらは細胞膜上に発現しているが,細菌由来の分子を認識するものはおもに細胞表面上に,ウイルスを感知するものはエンドソーム膜に存在する.異物を認識すると転写因子NF-κB(nuclear factor-κB)などを活性化し,サイトカイン産生などを誘導する.b NOD-like receptor(Nucleotide binding oligomerization domain-like receptor:NLR)………………………… 上述したTLRが細胞外の異物を認識するのに対し,NLRは細胞質内のセンサーとして働くファミリーである.NLRにはNOD1やNOD2,NLRP等があり,TLRと同様に細菌由来成分を認識する.NOD1,NOD2はNF-κBを活性化して炎症性サイトカイン等を産生し,NLRPは他の分子とインフラマソームという複合体を作り,IL-1βなどを誘導する.c RIG-I like receptor(RLR)…………… RLRも細胞質内のセンサーであり,RIG-IやMDA5が知られている.ウイルス由来の核酸を認識するが,同じく細胞質に存在する自己の核酸は特殊な修飾により認識しないよう制御されている.d C型レクチン受容体(C-type lectin receptor:CLR)………………………… 細菌や真菌などの病原体特有の糖鎖を認識する受容体ファミリーである.Dectin-1, 自然免疫系と獲得免疫系は,それぞれ異なったストラテジーで異物を認識し,協調して生体防御応答を誘導するDOsB 免疫学免疫系による異物認識機構2

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