2177血液科研修ノート
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知識の習得の仕方、勉強の仕方B第1章 血液科研修でのアドバイス254どこで学位をとるか?研究室の選び方 学位は「足の裏の米粒のようなもの」とよくいわれる(とっても食えないし,とらないと気持ちが悪い).よい研究室では楽しく研究の基礎を学ぶことができ米粒もとれてスッキリするが,自分に合わない研究室に迷い込むと,こんなに辛い思いをしてまで学位をとる意味があるのか…と悩むことになる.したがって最初の研究室選びはとても大切だ.信頼できる先輩や指導医に研究室を紹介してもらえる場合は,それに従うのが無難だろう.自分で研究室を選ぶ場合は,まず大まかな研究テーマを決めよう.自分が興味のあることでよいが,さらに,これから「伸びる」研究テーマを選ぶことができればベストである.次にそのテーマで研究を行っているラボを探して,論文を読んでみよう.論文にはその研究室の方針や雰囲気が必ず現れるので,面倒がらずにじっくり読もう.未経験者が内容を完全に理解するのは難しいだろうが,もし研究経験のある先輩がいればその人の助けも借りて,なるべく理解するよう努めよう.また,どのレベルのジャーナルにどのくらいの頻度で載せているか,大学院生が筆頭著者になっているかも重要な情報である.これらの情報をもとによさそうな研究室を見つけたら,連絡をとって見学してみよう.その際には,研究室の方針と自分の求めるものが合っているかどうか(トップジャーナルのみを目指すラボなのか,それとも堅実に一定のペースで論文を出すラボなのか,チーム制で協力して実験を進めるのか,それとも1人1テーマで研究を進める個人型のラボか)を確認するとよい.また,自分のライフスタイルと合っているかどうか(朝型か夜型か24時間型か,週末も実験する必要があるか)も重要なチェックポイントだが,休みをとれるかどうかばかり聞いていると嫌われる可能性があるので要注意.よい研究室は大抵人気もあるので,希望者全員が入れるわけではない.ラボ見学のときに自己アピールしたければ,やはりその研究室の論文を読み込むのがよい.今は情報収集が容易にできるので,数日あれば論文の大まかな内容を掴み周辺知識を得ることが可能なはずだ.実際にはその「簡単なこと」をやってくる人はほとんどいないので,それだけで好印象を与えることができる.5研究室での生活 研究を開始してしばらく経つと,まったく計画通りにいかないことに気づくだろう.基礎研究というのはまだわかっていないことを調べるものなので,基本的に失敗するものである.ざっくりいって,仕掛けた実験のうち9割は失敗する.この点が失敗の許されない臨床との大きな違いであり,気持ちの切り替えが必要である.大切なのは,上手くいかなくても腐らずに一定のペースで研究を続けることだ.また実験系の研究室では,考える時間(論文を読んだり実験計画を立てたりする時間)と手を動かす時間(実際に実験を行う時間)のバランスも重要である.サッカーの名言に「走りながら考える」(イビチャ・オシム)というのがあるが,研究室では「手を動かしながら考える」ようにしよう.論文をただ読むだけよりも,自分のデータをもとに考えるといいアイデアも出やすいものだ.6学位取得!ついでに留学? 研究がまとまり学術雑誌に論文が受理されたときの喜びは,何物にも代えがたい.また学術雑誌に採択されるレベルの研究が アイデアのない研究は意味がないが,考えてばかりでもダメ.「手を動かしながら考える」習慣をつけよう.コツ

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