2177血液科研修ノート
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研修で学ぶべき主な症状・症候の見方第3章 研修で学ぶべき主な症状・症候の見方61く侵襲の少ない方法を考えるのが基本である.ただし,急速に増悪し一刻も早く治療を開始しなければならない病態の場合は,限られた時間の中で速やかに治療方針を決定できる検査とともに,鑑別に役立つと思われる検査をできるだけ多く行っておくと,後に最終診断を行う上で有用となる.2診断の進め方 リンパ節腫脹の診断にあたっては,リンパ節のサイズや増大速度,性状(硬さ,可動性,圧痛の有無)に加え,身体のどの領域に分布しているかが重要な情報となる.歯科疾患などによる局所的な炎症では,その領域のリンパ節が反応性に腫脹する.一方,ウイルス感染症などの全身の炎症性疾患では,広範なリンパ節腫脹を認める.悪性リンパ腫のうち,Hodgkinリンパ腫は隣接するリンパ節領域に連続性に進展する傾向があるのに対し,非Hodgkinリンパ腫ではあまりそのような傾向はない(図2).癌の転移の場合は,消化器癌のVirchow転移など,それぞれの疾患で進展しやすいリンパ節領域が知られ,リンパ節病変の分布は原発巣を探す上で一つの手がかりとなる. 画像検査における性状も重要な参考所見となる.感染症やアレルギーなどで反応性に腫脹したリンパ節は,超音波やCT検査において勾玉のような形状を呈し,リンパ門も認められる.悪性リンパ腫では内部構造が均一であるのが典型的であるが,急速に増大するものでは内部壊死がみられたり,また線維束を伴うような病型では内部構造が不均一に映ることがある.また,悪性リンパ腫では多くの場合,周囲の血管や器官を圧排して増大し,浸潤傾向は乏しいことが癌との相違点であるが,T/NK細胞リンパ腫などでは周辺構造物への浸潤・破壊傾向が強いものがある.なお,結核性リンパ節炎では石灰化と内部壊死が特徴的であり,胸膜の肥厚や肺病変の存在なども参考所見となる. 肝脾腫においては,肝脾が病変の首座である場合と,全身性の病態に伴い肝脾腫を認める場合とがある.前者の例としては肝脾型T細胞リンパ腫(hepatosplenic T-cell lymphoma)や脾辺縁帯リンパ腫(splenic marginal zone lymphoma)などの一部のリンパ腫病型が相当し,後者では全身性の感染症(伝染性単核球症,慢性活動性EBウ図2 悪性リンパ腫のFDG-PET所見a:Hodgkinリンパ腫の一例.病変は隣接するリンパ節領域に連続性に進展する性質をもつ.b:びまん性大細胞型B細胞リンパ腫の一例.病変の広がり方は個々の症例で異なり,身体の様々な領域に進展する.ab
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