2177血液科研修ノート
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2081基本的な考え方 移植片対宿主病(GVHD)は同種造血幹細胞移植後にみられる合併症の一つで,生着したドナー由来の免疫細胞が患者組織を傷害することにより発症する疾患である.免疫抑制剤による適切な予防と治療が重要である.2病態a 急性GVHD…………………………… ドナーT細胞は,移植後に残存する患者抗原提示細胞(樹状細胞など)に提示されているアロ抗原を認識し,活性化してTh1細胞となり,さらに細胞傷害性T細胞へと分化して組織を傷害する.同時にTh1細胞はIFN-γを産生してマクロファージを活性化し,TNFαなど炎症性サイトカインの放出を促して組織を傷害する.b 慢性GVHD…………………………… アロ抗原に対する反応だけでなく,自己応答性も関与すると考えられている.すなわち,患者体内でドナー由来の免疫が再構築されていく際に自己抗原反応性T細胞が出現し,それが発症に関与する.事実,自己抗体が検出されることもある.しかし慢性GVHDの発症機序はいまだ十分には解明されていない.3診断a 急性GVHD…………………………… 典型的には移植後数週の生着時期にあわせて皮疹が出現し,続いて下痢や黄疸が生じる.皮疹は斑状丘疹のことが多く,掻痒感を伴うことも多い.重症化すると全身性紅皮症,水疱形成へと進展し,表皮剝離がみられる.肝障害は,肝実質細胞の障害(AST,ALTの上昇)よりも胆道系酵素(ALP,γGTP)の上昇が目立つ.下痢は水溶性下痢が典型的で,重症化すると高度の腹痛や麻痺性イレウスも生じる.病理所見はドナーT細胞の浸潤,患者上皮細胞のアポトーシスなどを特徴とする.各臓器の障害stageに基づいて(表1),gradeを判定する(表2).b 慢性GVHD…………………………… 典型的には移植後数か月以降に発症するが,より早期に発症し急性GVHDと重複することもある.強皮症やSjögren症候群など,自己免疫疾患に類似した症状を呈する.例えば,皮膚症状として斑状丘疹,紅斑,掻痒症,硬化,萎縮など,口腔症状として乾燥,歯肉炎,扁平苔癬様変化,潰瘍など,眼症状として乾燥,結膜炎,角膜障害など,またその他に閉塞性肺障害や肝機能障害など,実に多彩である.侵襲されてD 造血幹細胞移植同種造血幹細胞移植のGVHD対策5 移植後数週の生着時期に皮疹,黄疸,下痢のいずれかを認めた場合は急性移植片対宿主病(GVHD)を疑い,迅速に鑑別を進める. 移植後数か月以降に皮疹,口内炎,眼球乾燥,体重減少,息切れなどの症状を認めた場合は,慢性GVHDを疑う. GVHDと診断したら,重症度分類に基づいて治療適応の有無を判断し,遅滞なく治療を開始する.DOs
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