2177血液科研修ノート
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484 「医師は,診療をしたときは,遅滞なく診療に関する事項を診療録に記載しなければならない(第24条)」と医師法にあるように,診療録の記載は医師の法的な業務の一つである.日常臨床では診療録とは患者の日々の観察事項が記録されるだけではなく,医師の思考が披歴される場であり,今後行っていく方針が明示される場である.つまり診療録とは,記録は記載した医師にとっての振り返りの場となるだけではなく,他の医療従事者にとっての情報共有のツールになり,時に法的な証拠となる重要なものである. 一方,診療録の記載方法については法的に定められた形式はなく,学生教育などで問題指向型診療記録(POMR)に基づいた記載方法を学ぶ機会が多少ある程度で,実質は先輩医師の記載法を真似るなどして各医師それぞれの形式に基づいて記載されている.診療録の形式によって,観察や思考の枠組みが定められる.例えば図1に示したような記載形式では,観察したことと考えたことと行うことが曖昧模糊となっており,このような形式で記録していっても慎重な観察,明晰な考察の能力を養うことができない. 本項では,総合プロブレム方式に基づいた診療録の記載形式を紹介する.総合プロブレム方式とは,栗本によって1980年代に提唱された診療における思考形式であり,診療録の記載法である.用語の定義が明確で慣れるまでは扱いにくさもあるかもしれないが,一度マスターすれば臨床推論能力の向上に資する形式である.まず形式の概要をつかむために2つの基本的概念(「プロブレム」と「基礎資料」)について説明した上で,具体的なカルテの記載形式について解説する.図1  曖昧なカルテ記載の例●月●日・本日CRP↑昨日は高熱出ていないが抗生剤は変更したほうがよい?メロペン?・昨晩血糖300↑今日からインスリン開始するか.・血圧70台.かなり厳しい.家族に厳しめの説明必要.具体的な数値は?状態が悪化している根拠として正しいのか?用量は?実際は変更したのか?用量は?血糖値の目標は?結局家族に連絡したのか?どういう根拠で,どういう部分が厳しいのか?診療録の書き方1 プロブレムリストを作成するために,まずは十分な基礎資料を収集する. プロブレムを抽出する際には,まずはプロブレムの数がいくつあるかを考える. 日々のカルテはプロブレムごとに記載する.DOs

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