2180小児救急治療ガイドライン 改訂第3版
3/14

A小児救急医療の特徴33Point小児救急医療提供の本質重症化させないためにも,早期治療を行い,軽症で終わらせるようにする.ただし,このことは結果として軽症での受診が増加することになる点を,十分に理解しておく必要がある.多くの軽症疾患から,そこに隠れている緊急・重症疾患を見抜く専門性が必要である.家族の不安が強いなど社会医学的要素での受療行動が主体となっており,純医学的な考え方による線引きが難しいことへの医療側の理解も必要である.発育・発達過程であるために,年齢や体格などでは一律な医療(薬剤量など)は行えない.発育・発達を熟知し,養育環境の善悪の評価と生活指導が必要である.4意味での専門性が必要な部分が多いと思われる.さらに心身ともの総合的対応や小児の健全育成を見据えての対応が必要であり,その場限りの対応では不十分な疾患が多いともいえるだろう.小児救急医療提供の本質とは?小児救急医療はいろいろな角度において,成人救急医療とは異なる点が多い.この点を理解したうえで,救急医療提供が行われなければならない.以上のような本質があると考えられ,この点を十分に理解したうえで,小児救急医療あるいは時間外小児医療に携わる必要があると思われる.小児救急医療の特徴に基づく保護者のニーズはどのように変化したか?「小児救急医療は時間外診療の延長である」,あるいは「患者は軽症者ばかりなのでどんな医師でも診療可能で,特別な医療機器も不要である」といわれ続けてきた感がある.平成9年の厚生省救急医療体制基本問題検討委員会の答申でも,小児初期救急医療は全医師で十分対応されている,と明言されている.しかし現実には,その当時からすでに,不幸にも緊急度や重症度の高い患児の治療に遅れが生じていたことも事実である.すなわち,小児救急は軽症ばかりで受診不要例が多いという考えはいわゆる医療提供側の理論であり,育児不安・急病不安におののく多くの保護者・家族に通用するものではない.確かに小児救急医療に軽症者が多いことは事実である.小児救急医療の質が,成人の事故外傷を中心として発展した救命救急医療を主とする高度救急医療とは,救急度・重症度という観点で異なるのは事実であろう.しかし,成人の高度救急医療と同じ土俵での比較は危険であり,社会医学的にも同じ立場での比較は不可能と考えられる.小児救急医療の本質を見極めれば,いかに傷病に苦しむ患児を軽症ですませるか,終わらせるかという点に大きな特徴があり,救急医療という大枠のなかでは立派な予防的救急医療の一端を担っているといえよう.逆に社会医学的救急医療の観点からは,軽症例が多いなかからより緊急度の高い患児を見抜き,かつその重症化の予知を行い,そして軽症で食い止める小児救急医療こそが,真の救急医療の一面を成しているといえるであろう.このような考えに立つことが医療提供側,特に小児救急医療提供者に求められており,医療側がよくいう「不要・不急の受診」「なぜ時間外に受診するのか?」「なぜ朝まで待てないのか?」の答えは,まさにこの点にあるものと思われる.すなわち,専門的知識のない,あるいは育児不安の強い一般保護者の多くがわが子の急病・苦痛を心配すればするほど,その受療行動は一刻も早く安心が欲しいという短絡的行動にならざるを得ない.このような保護者の増加には,少子化時代でかつ親自身が小児期から成人するまで子どもとの接触歴がないままで育つなど,現代の親が幼少期から小さな子どもたちとの関わりを経験しなくなった社会構造の変化が強く影響しているものと思われる.よって,現代では多くの保護者において,わが子の発達の把握や急病の程度

元のページ  ../index.html#3

このブックを見る