2183循環器研修ノート 改訂第2版
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第4章 各疾患のみかたと対応259不整脈B1) 洞不全症候群 50bpm以下の洞徐脈をI群,洞停止や洞房ブロックをII群,上室不整脈停止後の洞結節回復が遅れて生じる洞停止をIII群として分類されている.日本循環器学会「不整脈の非薬物治療ガイドライン」において,ペースメーカ植込み適応の判断で重要な要素は,「自覚症状」と「随伴症状(心不全など)」の有無である.診断には12誘導心電図だけでなく,長時間記録法を積極的に活用していく.2) 房室ブロック 心房と心室をつなぐ房室間構造は,房室結節(田原結節)-His束を指し,第1度房室ブロックとWenckebach型第2度房室ブロックは,通常機能的伝導障害であることが多い.PR時間が0.2秒以上延長した第1度房室ブロックに対して,Wenckebach型第2度房室ブロックは心拍ごとにPR時間が徐々に延長しブロックをきたす.His束以下の器質的伝導障害に起因するブロックが,MobitzII型第2度房室ブロックである.2:1房室ブロック,高度房室ブロック,完全房室ブロックは房室刺激伝導系いずれの障害でも出現する.MobitzII型第2度房室ブロックはPR時間延長なしに突然にブロックをきたし,ブロックが進行し完全にP波とR波に連動がなくなると完全房室ブロックとなる.器質的伝導障害はペースメーカ植込みが必要となる.第1度房室ブロッックでも器質的障害が原因のこともあり,自覚症状を伴う場合には電気生理学的検査が必要である.c 頻脈性不整脈………………………… QRS幅の狭い頻脈発作と,QRS幅の広い頻脈発作がある.QRS幅が広い場合は心室不整脈が多いが,脚ブロックを伴う場合や心室内伝導障害を認める場合には,上室性であってもQRS幅は広くなる.頻脈性不整脈は,頻拍に伴う心機能低下,血栓形成による心原性脳塞栓症,また致死性不整脈への進展に注意が必要である.1) 上室不整脈■心房期外収縮 洞結節を起源とする洞調律とは異なる部位からの心房興奮であり,起源は右心房・左心房のみならず,上大静脈内・冠静脈内・肺静脈内心房筋に有することがある.長時間記録法であるHolter心電図やイベントレコーダにて期外収縮の出現量と連発形成の評価が大切である.■WPW症候群・発作性上室頻拍 デルタ波を有する顕在性WPW症候群が,副伝導路を順行性に伝導するのに対して,副伝導路を逆行性に伝導するものが潜在性WPW症候群である.後者の頻拍発作は,房室結節を順行することでデルタ波を認めない房室回帰性頻拍である.また,房室結節に進入する主経路である速伝導路に加えて,遅い伝導特性をもつ遅伝導路が存在し,両伝導路を旋回した場合の頻拍が房室結節リエントリー頻拍である.発作時の心電図ではP波を確認することが大切であり(図2a),電気生理学的検査にて確定診断ができる.■心房頻拍 近年,先天性心疾患を含めた心臓手術の進歩から術後の生存率は向上し,障害心筋や術創部を起源とした心房頻拍症例が増えてきている.そのため,心房頻拍の診断には病歴の聴取が欠かせない.心電図では基線に着目しisoelectric lineを認めるが(図2b),確定診断には電気生理学的検査が必要である.最近では三次元マッピングシステムを用いて,頻拍を可視化することができるようになっている.■心房粗動・心房細動 通常型心房粗動は三尖弁輪に沿って旋回し,診断には12誘導心電図が有用である.右心房を大きく旋回するため,特徴的な鋸歯状波形となる(図2b).心房細動は,起源の多くが左心房への開口部にある肺静脈内

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