2183循環器研修ノート 改訂第2版
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485心筋症H1基本的な考え方1-3) 1957年に初めて“心筋症”という呼称が使用されて以来,心筋症の定義・分類が行われてきた.1980年には,「原因不明の(idiopathic)心筋疾患」と定義された.1990年代に入ると分子遺伝学の進歩により様々な遺伝子異常が報告されるようになり,1995年には「原因不明の」が削除され「心機能障害を伴う心筋疾患」と広く定義された.このような状況を踏まえ,米国心臓協会(AHA)および欧州心臓病学会(ESC)から,それぞれ新たな分類が提唱されている.わが国では1970年の日本循環器学会総会で「特発性心筋症」という名称が提唱された.1974年に厚生省特定疾患「特発性心筋症調査研究班」が発足し,1985年に『心筋症の診断の手引き』が作成され,1994年に一部改訂され,2005年に『心筋症:診断の手引きとその解説』で独自の分類が示された.このように心筋症に対する理解の深まりとともに日米欧がそれぞれの定義と分類を提唱している.日本循環器学会より2011年『拡張型心筋症ならびに関連する二次性心筋症の診療に関するガイドライン』,2012年に『肥大型心筋症の診療に関するガイドライン(2012年改訂版)』が公表されている.2心筋症の定義と分類1-3) AHAが2006年に提唱した定義では,「心筋症はしばしば(必ずではない)心室の肥大や拡張を示す機械的および・または電気生理学的機能異常を伴う一群の疾患である.通常遺伝子異常が原因である.心筋症は心臓原発性か全身疾患の部分症である.しばしば心臓死や心不全の原因となる.」とされている4).AHA分類では心筋症を病変の首座が心臓にある一次性心筋症と全身疾患の心病変である二次性心筋症に大別している.一次性心筋症は,遺伝性,混合性,後天性の三つに分類されている.AHA分類ではQT延長症候群やBrugada症候群などのイオンチャネル病も遺伝性心筋症として含まれている. 2008年発表されたESCの心筋症の定義は「冠動脈疾患・高血圧・弁膜症・先天奇形によるものではない,構造的・機能的異常を伴う心筋疾患」とされた5).ESC分類では,心筋症を①肥大型心筋症,②拡張型心筋症,③不整脈原性右室心筋症,④拘束型心筋症,⑤分類不能の五つに大別し,AHA分類と同様,遺伝性/非遺伝性という概念を導入している.ここでは,二次性心筋症という概念は排除されており,1995年のWHO/ISHF分類の延長上に位置する形態・機能的異常をもとにした分類で,わが国における分類にも近い. わが国では,2005年の『心筋症:診断の手引きとその解説』で心筋症は「高血圧や冠動脈疾患などの明らかな原因を有さず,心H 心筋症心筋疾患の診断のポイント1DOs 心筋症の診断を進めるには,“特定心筋症”を除外する必要があるが,まずは内科疾患の基本的な診断が必要である. 日常診療で心筋症を診断するきっかけになるのは12誘導心電図である. 心筋症の診断に心エコーは必須である. 心臓MRIを用いた心筋性状診断が積極的に取り入れられている.
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