2183循環器研修ノート 改訂第2版
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486筋に病変の首座がある一連の疾患」と定義されている6).1970年日本循環器学会で“特発性心筋症”という名称が提唱されて以降,厚生省特定疾患でも同じ名称が使用され,1985年の『心筋症の診断の手引き』では“特発性心筋症”を拡張型心筋症,肥大型心筋症,拘束型心筋症の3型に分類した.3診断の進め方のポイント7, 8) 心筋症の診断を進めるには,“特定心筋症”(WHO/ISFCの“特定心筋疾患”)9)(表1)を除外する必要があるが,これらの多くが全身性の異常に続発することがあるため,まずは内科疾患の基本的な診断が必要である.したがって,問診による病歴の聴取に始まる.年齢,性別を考慮したうえで,主訴,現病歴,既往歴,家族歴,生活歴を詳細に聴取する(表2).さらに,12誘導心電図,胸部X線は必須である.したがって,心筋症を診断するには,常に心筋症の存在を念頭においた日頃から全身を診察することが必要である.鑑別すべき特定心筋症の多くはこの時点である程度除外できる. 日常診療で心筋症を診断するきっかけになるのは12誘導心電図である.心電図異常を呈するには高血圧性心疾患や虚血性心疾患が多いが,これらが除外された残りの心電図異常の症例のなかに心筋症が含まれていることがある.心筋症の診断のきっかけとなる心電図所見には以下のようなものがある.a 左室肥大……………………………… 心電図上は様々な左室肥大の指標があるが,これらの指標に加えST-T変化が加わった場合に,心筋症を除外する必要がある.高血圧性心疾患と肥大型心筋症を心電図のみで鑑別するのは困難であることが多く,高血圧の病歴とともに心エコーによる心肥大の状態を評価する必要がある.ただし,心エコーをもってしても両者の鑑別が困難な場合もある.心サルコイドーシスでは,右脚ブロック・左軸偏位・房室ブロックな表2 心筋症の診断にあたって必要な問診の内容① 主訴および現病歴② 既往歴:冠危険因子の有無,薬剤の使用や放射線治療も含めて③ 家族歴:心筋症や突然死の家族歴,遺伝性疾患も含めて④ 生活歴:職業・ライフスタイル・嗜好(食事内容や飲酒量)も含めて表1 特定心筋疾患虚血性心筋疾患弁膜性心筋疾患高血圧性心筋疾患炎症性心筋疾患(心筋炎など)代謝性心筋疾患 内分泌性― 甲状線中毒性,甲状線機能低下症,副腎皮質不全,褐色細胞腫,末端肥大症,糖尿病など 蓄積性― ヘモクロマトーシス,グリコーゲン蓄積症(Hurler病,Hunter病),Refsum病,Niemann-Pick病,Hand Schüller-Christian病,Fabry病,Morquio-Ullrich病など 欠乏性― カリウム欠乏,マグネシウム欠乏,栄養失調(貧血,脚気,セレニウム欠乏),家族性地中海熱など 全身性疾患―膠原病,サルコイドーシス,白血病,肺性心など 筋ジストロフィ―Duchenne型,Becker型,強直性筋萎縮症など 神経・筋疾患―Friedreich失調症,Noonan症候群など 過敏性,中毒性疾患―アルコール性心筋症,薬剤性,放射線性など産褥性心筋疾患(1995年WHO/ISFCによる:文献9より改変)

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