2189デジタル脳波の記録・判読の手引き
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88850第2部 指針に基づいた実例提示事例1:16歳,女性,左側頭葉てんかん疑い[場面1] 某総合病院の脳波検査室を想定する(脳波検査の件数が多く,朝から脳波検査の予約が1時間ごとに入っている). まず,検査技師は,検査前にカルテと依頼票などをみながら,脳波検査に必要な患者の情報を事前に収集する.一般的解説 脳波記録の際に必要な臨床情報には,①事前に調べておくべきもの(患者の年齢,性別,服用中の薬剤など),および②検査の際に患者に確認すべき情報(p.52の場面5)の二つがある.[場面2] 次に脳波計の設定を事前に確認する.担当技師は,デジタル脳波計を立ち上げて,脳波計の様々な設定を,それぞれのボックスをクリックしながら確認,場合によっては修正していく.記録ごとに,原則的に記録条件はすべての設定をチェックする.システムリファレンスの設定が通常通り(たとえば,C3とC4の平均など)になっているかを確認する.次に保存電極の選択状況を確認する.デジタル脳波の解説 システムリファレンスとは,デジタル脳波でのデータ記録時の基準電極であり,すべての電極に対する基準となる.すなわちデジタル脳波計の電極接続箱のG1(-)端子には各電極端子が,G2(+)端子には共通端子が接続している.この共通端子がシステムリファレンスである.(第1部 1-1.総論:ベーシック(p.4),1-4.記録の最中の注意点:ベーシック 1)システムリファレンス(p.15)).デジタル脳波計ではすべての脳波データはこのシステムリファレンスを基準に測定しているので,測定中および測定後に表示モンタージュを変更(=リモンタージュ)することが可能となる.なお,従来のアナログ脳波計ではリモンタージュができなかったため,測定時(=記録時)のモンタージュから変更することはできずに記録されたままの波形を判読するしかなかった*1.*1 アナログ脳波計の時代には,記録時の適切なモンタージュおよびその他の表示条件を選択することが極めて重要であったため,記録最中に臨機応変にかつ必要に応じて,モンタージュさらには感度,フィルタ設定などを適切にかつ速やかに判断して変更する技量がより求められたといっても過言ではないであろう. デジタル脳波計の時代は,脳波測定後に自在に脳波表示条件を変更できるので,記録時には同じモンタージュや表示条件で脳波記録を行ってよいと一部で誤解されている(第1部 はじめに(p.2)).表示条件の変更には際限があり,記録時に問題点を抽出することは重要で,また判記録1 本項では,検査技師の日常脳波検査の遂行過程を順に説明していく形式で,記録のポイントを具体的に提示する.検査前(臨床情報取得,脳波計の条件設定),検査中(脳波変化に応じた各種条件の変更),検査後(脳波データ保存,検査報告書作成,脳波所見の見直し)についてそれぞれ述べる.サマリーコメント

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