2190精神科研修ノート 改訂第2版
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1241はじめに 学生・生徒の診療においては,思春期特有の面接の難しさもあって,「話の聴き方」に注意が払われることが多い.しかし,診療に役立つ情報を誰からどのように集めるか,という問題も同じくらい重要で難しい.学生・生徒の生活時間に占める学校の割合は大きく,養育者だけでなく,教育現場からの情報収集も欠かすことができない.教育現場と連携することにより,医療的視点,教育的視点の両方から患者を見つめ,治療を進めることができる.2連携のポイントa 連携のタイミング  実際に教育現場と連携が開始される契機について例を示す.①学校生活に(精神症状に基づく)問題があり,病状の説明や,配慮・対処に関する医師の助言を学校が求める.②疾病に関する正確な説明,学校での配慮や支援に関する医師の意見を学校に伝えてほしいと本人・保護者が希望する.③治療にあたり,学校での様子など学校側の情報を医師が求める 初診時に学校関係者が同行し,スムーズに連携できる場合もあるが,必ずしもそうではない.連携のきっかけはケースバイケースだが,治療の進展のためにも,連携の機会を逃さないことが重要である.b 連携の手段  学校との連携手段としては,手紙や面談が一般的で,電話やFAX,電子メールなどを活用する場合もある.診断書を含む書面は,医療機関と学校の間のコミュニケーションによく用いられる.学校は,本人や保護者を通じて情報を得ていたとしても,書面により初めて医療機関と直接接点をもつことになり,ここから連携が始まることも少なくない.学校からの情報提供,学校への配慮依頼など様々な目的で用いられる. 面談は有効な手段であり,たとえば診察時に学校関係者に同行してもらい合同面接の形式をとったりする.学校関係者と医療者が直接面談することで,双方が聴きたいこと,伝えたいことをすりあわせることができ,認識を齟齬なく共有しやすい.いずれの方法でもコストや時間確保の問題が避けられないが,面談の場合には特にその負担が大きい.面談の目的を明確にし,十分な準備をして臨みたい.DOs13F 医療現場でのコミュニケーション教育現場との連携 ■有効な環境調整を実施するために教育現場と連携しよう. ■スムーズな連携のために教育現場に関する基礎知識を学ぼう●学校との連携に必要な意思疎通学校との連携にあたっては,養育者の同意が前提となる.当然,本人にも説明し,同意を得られるよう努める必要がある.そのうえで,スムーズな情報共有のためには,共有する内容を事前に養育者・本人と打ち合わせておくことが望ましい.たとえば,診断名や病状,家庭環境や成育歴などについて,どこまで詳しく,どのような表現で伝えるかは問題になりやすい.コツ

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