2199愉しく学ぼう 小児の臨床神経生理
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169各論Ⅵ•ME機器販のコンピュータから構成される.生体信号は電極接続箱において増幅された後,アナログからデジタル変換され(A/D変換),メインユニットに伝送される.メインユニットではフィルタ処理が行われ必要な周波数成分が取り出される.また,整流や積分などの演算処理も必要に応じて行われる.この他,メインユニットは刺激装置の出力や制御も担う.コンピュータでは加算処理,波形の表示や計測,レポートの作成,保存が行われる.コンピュータを使うことで結果の保存が容易になり,過去データの検索や,ネットワークによる電子カルテやオーダリングシステムとの連携も容易となっている.1.差動増幅器の働き 誘発電位や筋電図は,μVからmV単位の微弱な信号であるため増幅を行う必要があるが,微弱な電位であるため,蛍光灯や電源,その他の機器などが発生する外来雑音に埋もれてしまう.このため外来雑音を取り除き,信号成分のみを増幅する仕組みをもつ差動増幅器とよばれる増幅器が必要となる.差動増幅器は,信号を増幅するための2つの信号入力端子と増幅器の基準となるニュートラル端子(アース端子)をもち,この3つの端子に電極が接続されてはじめて次のように動作する. ①2つの信号入力端子の電位差(差動成分)が増幅される(図2). ② 2つの信号入力端子に同じ大きさ,同じ位相の信号(同相成分)が入力された場合には,差動増幅器は増幅作用をもたず出力は0 Vとなる1(図3). したがって,差動増幅器を用いると,生体信号は2つの電極の電位差(差動成分)として増幅され,外来雑音の発生源が十分遠くにある場合には,おおむね同相成分となり抑制されるので,外来雑音が取り除かれ生体信号のみが増幅される.もし,雑音源が近い場合は雑音も差動成分となり雑音を除去することはできない.この場合は雑音源そのものを探し,除去する努力が必要になる.2.アナログデジタル変換(A/D変換) 増幅された生体信号はアナログ信号であるため,加算処理などの数値演算を行うためには,一定時間ごとにアナログ信号を標本化(サンプリング)し,そのときの振幅を量子化した数値情報,すなわちデジタル信号に変換する必要がある.この変換作業を“Analog”から“Digital”へと変換することからA/D変換とよぶ.サンプリングにおいて,時間間隔をサンプリング時間,その逆数をサン1実際には完全に0Vとはならない.入力した同相成分の振幅と,そのときの出力の比をとった値を同相信号除去比(common-mode rejection ratio:CMRR)とよび,この数値が高いほど性能がよいことになるが,現在市販されている機器は実用上問題のない十分に高いCMRRをもつ.図2 差動成分に対する差動増幅器の働き-入力と+入力の差がA倍されて出力されるoutput0V-+×AE図3 同相成分に対する差動増幅器の働き-入力と+入力に同相,同振幅の信号が入力されると出力は抑制される(0V)output-+×AE

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