2201クッシング症候群診療マニュアル 改訂第2版
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 A ACTH依存性クッシング症候群83●●●Ⅲ 臨床編(各論)b)分子標的薬 近年細胞増殖に関与する成長因子受容体やその細胞内シグナル伝達系に対して選択的に作用する多くの分子標的薬が開発され,抗腫瘍薬としての有効性が認められ,現在臨床で用いられている.最近,進行性膵NETに対して2つの分子標的藥を用いたランダム化比較試験(RCT)が実施された15,16).マルチチロシンキナーゼ(EGFR, VEGFR, PDGFR等)阻害藥であるスニチニブ15),およびインスリン/IGF-1受容体以降の細胞内PI-3キナーゼ/Aktシグナル伝達系のmTOR阻害藥であるエベロリムス16)である.いずれの薬剤もRCTにて対照群と比較して有意なPFSの延長が示された.これを受けて両薬剤はFDA,EMAで承認され,わが国でも保険承認となっている.2EASの放射線治療 オクトレオチド誘導体に放射線核種(111In.90Y,177Lu)を標識した放射線リガンドが開発され,SSTRを介して選択的に放射性物質を腫瘍内へ取り込ませて内照射するという新たな放射線治療法が開発されPRRTとよばれる.現在,欧米を中心にPRRTはSRS陽性で手術不能な進行性・転移性NETに対して第1相,第2相臨床試験が行われ,症例によっては転移巣が著明に縮小・消失し,良好な抗腫瘍効果(9~38%)とQOLの改善が報告されている12)(表1).しかし,NETは症例数が少なく難治性疾患のためRCTの成績はなく,最終的な臨床評価は第3相臨床試験を待ちたい.3CDに対する薬物治療 CDの薬物治療の主な標的組織は1)下垂体,2)副腎,3)グルココルチコイド受容体(GR), の3つのレベルに分かれる17,18)(図2).すなわち下垂体でのACTH産生・分泌を阻害する薬剤,副腎でのコルチゾール産生を阻害する薬剤,およびコルチゾールの作用を阻止するGR阻害薬である.最近になってこれら異なるレベルで作用する新規薬剤が開発され臨床応用されている.a)向下垂体薬 主にSSTR2型に作用するSSA(オクトレオチド,ランレオチド)は,これまでCDに対する有効性は限定的であった.SSTR5型に高い親和性を示すパシレオチド(SOM230:600 μg ×2,皮下注)を用いてCD患者(31例)に対して15日間投与した第2相試験POCでは,76%で尿中遊離コルチゾール(UFC)の低下とACTH分泌を減少させ19),さらに第3相試験ではCD患者(126例)にパシレオチド2用量(600,900 μg ×2)投与してUFCの正常化(26%)を認め,12か月の投与で70%にUFCの低下(60%)を認めた20).副作用として高血糖を高頻度(73%)に認め,血糖降下薬を46%で開始した.このようにパシレオチドは,CDの下垂体腫瘍へ直接作用してACTH分泌抑制効果を示したことからCDの治療薬としてFDAにより承認され,現在わが国でも治験中である.しかしパシレオチドは下垂体だけでなく膵からのインスリン分泌やインクレチン分泌も抑制することから21),CDの治療にあたり,血糖コン1表 神経内分泌腫瘍(NET)に対するpeptide-receptor radionuclide therapy(PRRT)の効果報告者(年)症例数CR(%)PR(%)MR(%)SD(%)PD(%)90Y-DOTATOC Otte et al.(1999)2907146910 Waldherr et al.(2002)39518‐698 Valkema et al.(2002)52010135626 Bodei et al.(2003)29324‐282490Y-lanreotide Virgolini et al.(2002)390020443690Y-DOTATATE Baum et al.(2003)75037‐5211 Cwikia et al.(2010)60023‐770 Toumpanakis et al.(2010)82010‐6822177Lu-DOTATATE Kwekkeboom et al.(2008)310228163520CR:complete response,PR:partial response,MR:minor response,SD:stable disease,PD:progressive disease,DOTATOC:DOTA-D-Phe-Tyr3-オクトレオチド,DOTATATE:DOTA-0-Tgr3-オクトレオテート〔文献12より改変引用〕

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