2204看取りの医療 改訂第2版
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1 医療現場の臨床倫理学と看取りの医療9Ⅰ総 論人である家族による「治療選択の余地がある疾患(optional zone)」とも考えられます24). とくに在胎26週未満の超早産児に対するアプローチとして,欧州(EU)からは次のような家族(法的代理人)による「選択の余地のある治療」も含んだ提案がされています24).しかしGuillenらは,先進20ヵ国および4つの国際専門機関から出されている31のガイドラインを調査し,その対応は世界各国において様々であることを報告しています.とくに在胎22週では87%が慰安ケアまたは個別ケア,25週では65%が集中ケアを推奨していますが,日本を含むいくつかの国ではこうした推奨ガイドラインがないのが現状です25). (1)23+0週未満:通常蘇生を推奨しない. (2)23+0週~23+6週:蘇生は,両親の希望に沿う. 希望により緩和ケア適応. (3)24+0週~24+6週:児が重篤な合併症がない場合,蘇生とNICU管理. 状態により治療中止し,緩和ケア適応. (4)25+0週以上:積極的蘇生とNICU管理を適応. 近年,妊婦の採血だけで施行可能なNIPT(Non‒invasive prenatal test)という新型出生前診断が導入され,遺伝カウンセリングを含む臨床倫理の重要性がますます大切な分野となってきました.その中で「意思表示できない胎児の人権と尊厳をいかに守るか」,とくに予後不良な致死的胎児や新生児への医学的対応を今後どうすべきかが,私たち医療者一人一人に問われています.通常先天異常と出生前診断を受けた児の多くが人工死産される一方,「fetus as a patient」(一人の患者としての胎児)として実験的に胎児治療の対象となったり,出生後は徹底した侵襲的治療介入で延命の対象とされています.たとえ短いいのちであっても,与えられたいのちを「fetus as a person」(一人の人間としての胎児)としてどのように慈しむか,そうした医療選択が果たしてあるのかが問われています.2004年にLeuthnerにより「胎児緩和ケア」という新しい選択肢が提案されました26)27). 今後こうした胎児分野の臨床倫理学の発展や研究もますます重要になってくると思われます.●文 献● 1) 船戸正久:小児医療における終末期の倫理的課題.小児看護38:680‒687,2015. 2) 船戸正久:新生児医療の進歩と生命倫理―医的侵襲行為の差控え・中止の基本的考え方.日児誌117:1560‒1568,2013. 3) 白浜雅司:臨床倫理とは何か.緩和医療学3(1):3‒12,2001. 4) Siegler M, Edmund D, Pellegrino PA et al:Clinical medical ethics. J Clin Ethics 1:5‒9, 1990. 5) Jonsen AR, Siegler M, Winslade WJ:Clinical Ethics:A Practical Approach to Ethical Decisions in Clinical Medi-cine. 3rd ed. McGraw Hill, 1992. 6) 宮坂道夫:医療倫理学の方法―原則・手順・ナラティブ.医学書院,2005. 7) Schneiderman LJ, Spragg RG:Ethical decisions in discontinuing mechanical ventilation. N Eng J Med 318:984‒10 今後の新たな課題
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