2204看取りの医療 改訂第2版
14/22

100Ⅳ 緩和ケアと看取りの医療体的,精神的,社会的,霊的(スピリチュアル)要素を含む包括的かつ積極的なケアへの取り組みである.そして,それは子どもたちのQOLの向上と家族のサポートに焦点を当て,苦痛を与える症状の管理,レスパイトケア,終末期のケア,死別後のケアの提供を含むものである」(A Guide to the Development of Children’s Palliative Care Services, ACT/RCPCH, 2003). ここでいうLTIとは必ずしも致死的でない状態ですが,常に生命が脅かされている状態の疾患を総体的に指しています.重症の脳性麻痺の子どもや,神経筋疾患やある種の代謝病なども含まれます.また13トリソミーや18トリソミーなどの染色体異常の他に,先天性の多発奇形で高度の医療的ケアが必要なお子様も含まれます.先天性心疾患や腎不全の重度な方もあてはまるでしょう.一方でlife‒limiting‒condition(LTC)という概念もありますが,これは文字どおり生命予後が限られた状態を指します.その多くは悪性疾患で治療になかなか反応しない場合なのですが,時には極度の心不全や腎不全の状態の場合もあり得ます. 私たちは先の小児緩和ケアの定義を重視し,「家族,仲間とともに生きる癒しと希望の病院」を理念とするこどもホスピス病棟を2012年11月に,日本で初めて開設いたしました.すなわち設計の段階から,病院にいながらにして家庭と同じ,いやそれ以上の安らぎと癒しを感じることのできる,ある意味で病院らしくない病院をめざしました.こどもホスピスにおける働きとしておもに以下のような働きがあげられます.これらの働きはまさに小児緩和ケアの中核に位置づけられるものです.1)患児の身体症状への対応(holistic management of symptoms) 症状緩和または症状に対するトータルケア.小児難病や小児がんの子どもは痛みのほかに,嘔吐,けいれん,食欲不振,不眠,下痢,などさまざまな症状を訴えます.また中枢神経に病変があると意識混濁の他に,さまざまなレベルの四肢麻痺症状や,嚥下障がいや顔面神経麻痺などの脳神経症状を認める場合もあります.またホルモン機能の異常により,尿崩症やSIADH,下垂体機能不全等の症状にも注意しなければなりません.けいれんはそのまま呼吸停止を誘発し,亡くなる場合もあり,もっとも注意すべき症状のひとつです.また強い筋緊張にも対応が必要です.それらの症状に対し,お薬の投与や看護ケアや環境調整などを通して総合的に症状をやわらげるケアを指しています.以下に痛み,不穏,けいれんへの対応を簡単に述べました.(1)痛みへの対応 痛みはずっと持続する持続痛と,突然起こってくる突出痛に分けられ,両者に対応することが原則です.一般にはWHOによる疼痛に対する治療戦略が用いられ,小児に対しては以下の2段階戦略が用いられます. ① 軽度の疼痛の場合:アセトアミノフェンもしくはイブプロフェン開始.アセトアミノフェンのほうが小児に対する安全性は高く,優先度は高い.10 mg/kgで効果が不十分で2 こどもホスピスの実際の様子

元のページ 

page 14

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です