2209整形外科研修ノート
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3第1章 整形外科研修でのアドバイスこれから整形外科医を目指す君たちへA予防するのに重要となる.このような医療情勢で整形外科医の果たす役割はますます高まることは間違いなく,多くの病院で整形外科診療が求められている.3整形外科医としての達成感 整形外科治療は保存療法と外科的治療からなる.消化器内科と消化器外科,脳外科と神経内科のように競合する科がないことも整形外科の大きな特徴である.したがって,運動器を総合的に管理するのが整形外科医である.骨折などの外傷,スポーツ障害,脊椎疾患,関節リウマチなどの炎症性関節疾患,変形性関節症などの加齢に伴う退行性変性疾患などを対象とする疾患は様々である.運動器疾患の治療では保存的治療は重要な位置を占め,薬物療法,運動療法,リハビリテーション,装具療法,理学療法は,病期に応じて整形外科医の判断の下に実施される. 整形外科の手術治療は生体材料の進歩と密接に関連し,発展してきた歴史がある.骨折の内固定材は素材や形状の改善により術後の後療法を短期化したし,人工関節もデザインが改良され,バイオメカニクスの研究により可動域が増大し,日常生活ではほぼ不満がない程度まで機能改善が期待できるようになった.治療材料や概念は刻々と進化し,この整形外科のダイナミックな動きもぜひ体感していただきたい. 整形外科の醍醐味は,歩行が困難な患者さんが手術により疼痛が消失して,自由に歩行が可能となったり,変形が矯正され外見が改善されたり,患者さんの喜びを一緒に共有できることだ.手術は医師の創意工夫により,さらなる治療成績の改善が得られることも大きな魅力である.外科医としての技術習得には時間が必要だが,様々なレベルの手術があり,これらの手術経験を基盤にして,より高度な手術を習得することが肝要である.自分の手で患者さんを治し,生活の質を向上させることができるのが整形外科医の喜びなのである.4目標を高く 整形外科は国際交流の最も盛んな診療科の1つである.アジア,ヨーロッパそしてアメリカなどで臨床あるいは基礎学会が開催され,外国の医師と交流が行われている.今後ますます世界との距離が短縮し,外国人医師と接触する機会が増えるであろう.大きな視点で整形外科学を習得していただきたいと考えている.また,日本の整形外科医の特筆すべき点としては基礎研究を自ら行う機会があることだ.是非基礎研究に従事して,広い視野で病気を考えていただきたい.5ヘルシンキ宣言の遵守 基礎研究と臨床研究ではヒトを対象とする医学研究の倫理的原則であるヘルシンキ宣言を遵守する必要がある.特に実験計画書には利益相反(COI)を明記し,インフォームド・コンセントは文書で取得して所属する施設の倫理委員会などの審査委員会による審議を受けることが求められている.6整形外科専門医を目指して これまで日本整形外科学会には専門医制度があり,毎年400~600名の医師が整形外科専門医資格を目指して受験してきた.今後,専門医認定機構により認定されるが,整形外科は基本領域の1つであり,基本領域の専門研修プログラムが整備基準に則り,国民に信頼される専門医の育成を目指し,研修プログラムが策定されている.これを1つのステップとして,真に実力のある整形外科医となることを心から期待している.横浜市立大学医学部整形外科 齋藤知行

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