2209整形外科研修ノート
6/8

244のサイトカインにより複雑なカスケードが形成され,分解と合成が制御されている.これが分解に傾くと軟骨が変性し,OAが進行する. OAには,家族性に発生するものがあり,また,複数の関節が合併して発生するものがあるため,遺伝子にも原因があると考えられてきた.この遺伝子は多因子遺伝子といわれ,原因となる遺伝子に環境が加わって発症するものであり,II型コラーゲン遺伝子の異状が注目されている.4症状 関節の疼痛や腫脹を認める.動作開始時の疼痛(starting pain)を訴えることが本疾患の典型的な症状である.荷重関節では椅子から立ち上がる動作や,歩行などの軽度な運動の動作開始時に疼痛を訴える.また,関節液の貯留や骨増殖による関節腫脹を認める.ただし,著しい熱感や発赤を伴うことは少なく,これらが著明な場合は結晶性関節炎や化膿性関節炎を疑う.こわばり感を訴えることもあるが,通常短時間で消失するため,30分を超える場合は関節リウマチ(RA)との鑑別を要する.5検査a 血液検査  血液学的あるいは生化学的血液検査では特に異常を示さず,CRPや赤沈などの炎症所見は陰性となる.もし陽性であればRAなどの炎症性疾患,化膿性関節炎など他の疾患を疑い,精査を進める.b 画像所見 1) 単純X線 X線所見は,関節裂隙の狭小化や閉鎖といった軟骨の変性に起因する所見と,軟骨下骨の硬化,骨棘形成といった増殖性の所見の双方がみられることが特徴的であり,RAなどの炎症性膝疾患のX線所見とは異なる(図3,4).その他の所見としては,骨嚢胞を認めることがある.X線所見により病期を分類として,Kellgren-Lawrence分類が有名(「第4章A. 10. 1)変形性膝関節症」表1 p.411参照)だが,他にも横浜市大式膝OA Grade分類(「第6章B. 4. 変形性膝関節症」p.695参照),日本整形外科学会股関節症判定基準(X線像評価)(「第4章A. 9. 1)①②③図3 変形性股関節症①関節裂隙の広範な消失,②骨嚢胞,③臼底の二重像を認め,末期股関節症である.図4 変形性膝関節症内側関節裂隙の閉鎖および骨棘形成を認める.

元のページ 

page 6

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です