2212診療実践小児神経科
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の移動運動だけが遅れるものに「shufing baby(シャフリングベビー)」(解離性運動発達遅滞)がある.運動の遅れがなく,社会性と言語発達が遅れるものに自閉スペクトラム症(autism spectrum disorder)がある.3) 行動の特徴の把握 社会で生きていく能力は,運動,社会性,言語などで表される知的能力と,自己の感情統制やコミュニケーション能力などの対人スキルで表される適応能力の二軸によって決定される.集団生活での問題のある児では,知的能力だけでなく,適応能力も評価する必要がある. 適応能力,すなわち対人スキル,不注意,多動衝動性などは,時間的経過をみていくうえでもスコア化して評価することが望ましい.注意欠陥/多動性障害(AD/HD:attention-decit/hyperactivity disorder)が疑われる場合は,DSM-5の診断基準1)で不注意の9項目中何項目が陽性であるか,また多動性・衝動性の9項目中何項目が陽性であるかを明記する.自閉スペクトラム症の診断もDSM-5の診断基準1)に基づいて診断するのが望ましい.自閉スぺクトラム症の診断と重症度の判定は,autism diagnostic observation schedule 2nd edition (ADOS-2)で行うことが国際的な基準になりつつある.日本語版2)も出版されたが,高価で検査時間も40~60分かかり,通常の小児神経科外来では使いにくい.日常診療では,日本人で標準化されている質問紙(AD/HDの診断基準をスコア化したAD/HD-RSや自閉スペクトラム症にみられる行動をスコア化できるASSQ-Rなど)を家族と担任に記載してもらい,これらを診断の基準としている.ASSQ-RではDSM-5で診断の項目に加えられた感覚刺激に対する過敏さまたは鈍感さまたは環境の感覚的側面に対する並外れた興味は評価できないので,別に問診する必要がある.1) 全般的発達遅延(global developmental delay) 乳児期から発達の遅れが出る場合,頸の坐りだけでなく,視線を合わせない,笑うことがないなど全般的発達遅延の形をとることが多い.また,筋緊張は低下することが多い. 原因は,常染色体異常症(Dダウンown症候群など),先天異常,脳性麻痺,周産期障害,髄膜炎,胎内感染症,脳奇形(滑脳症,脳梁欠損,水頭症と髄膜瘤)などの大脳の障害によることが多い.これらの多くは,進行性の経過はとらないが,中等度~重度の知的障害になることが予測される. 診察の前に身体計測値の標準偏差を必ず計算する.低身長や小頭症は染色体異常症や脳形成障害の可能性がある. 身体的診察では,顔貌の異常や小奇形に注意する.比較的頻度の高い乳児期に明らかになる発達の遅れ2Part 1主要神経徴候と鑑別3A 全全全全全全全全全全全全全全全全全全全全全全全全Part1
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