2220よくわかる 子どもの喘鳴診療ガイド
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第3章 主な喘鳴性疾患の病態と治療154診 断 喘鳴や呼気延長を伴う呼吸困難が,運動や呼吸器感染症,ハウスダストなどのアレルゲン吸入,気候の変動などにより反復するといった臨床症状,遺伝素因,アトピー素因,呼吸機能検査などを参考に総合的に行う.このため,類似症状を示す気道系,心血管系疾患の鑑別診断(表1)1)が必要となる.特に年少児では気道径が狭く容易に喘鳴が生じやすいといった生理的特徴に加え,先天奇形や免疫能の低下などの可能性が年長児に比べ高いため,幅広く鑑別する必要がある.また,過去に喘息の既往がある児が喘鳴や呼吸困難をきたした場合も安易に喘息と診断することは避け,肺炎など他疾患を十分鑑別するよう心がける.・ 血中特異IgE抗体,皮膚テスト(プリックテストなど)の測定:小児の喘息ではアトピー型が大多数であり,アレルゲン診断のために行う.・ 肺機能検査:発作時は,スパイロメトリーで1秒量(forced expiratory volume in one second:FEVl.0),1秒率(FEVl.0%)の低下を認める.末梢気道閉塞を示す50%肺活量位の呼気速度(V450),25%肺活量位の呼気速度(V425)や最大中間呼気流量(maximal midexpiratoryflow:MMF)は非発作時でも低下していることが多い.β2刺激薬の吸入後に気道閉塞が改善すれば,気道可逆性ありとして強く喘息を疑う(気道可逆性試験).・ 気道過敏性検査:日本アレルギー学会による標準法や強制オシレーション法によるアストグラフ法が用いられる.気道収取物質としてメサコリンやヒスタミンが使用される.喘息児では気道過敏性が亢進する.治 療 喘息の治療は,発作の予防と急性発作時(喘鳴出現時)の対応に大別される.2.3.表1 喘息と鑑別を要する疾患○先天異常,発達異常に基づく喘鳴 大血管奇形 先天性心疾患 気道の解剖学的異常 喉頭,気管,気管支軟化症 線毛運動機能異常○感染症に基づく喘鳴 鼻炎,副鼻腔炎 クループ 気管支炎 細気管支炎 肺炎 気管支拡張症 肺結核○その他 過敏性肺炎 気管支内異物 心因性咳嗽 声帯機能異常 気管,気管支の圧迫(腫瘍など) 肺浮腫 アレルギー性気管支肺アスペルギルス症 cystic fibrosis サルコイドーシス 肺塞栓症〔濱崎雄平,河野陽一,海老澤元宏,ほか(監修),日本小児アレルギー学会(作成):小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2012,協和企画,2011〕

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