2224糖尿病治療薬クリニカルクエスチョン120
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114 Chapter Ⅶ SGLT2阻害薬を活用するSGLT2阻害薬の標準的な処方例を教えてください.56SGLT2阻害薬は,基本的にはDPP-4阻害薬やメトホルミンをベースに,第二・第三選択薬として併用するという使い方が望ましいです.また,併用によりインスリン使用量の減量を見込めます. 第二・第三選択薬として使用 SGLT2阻害薬の利点は,ほぼすべての糖尿病治療薬と併用でき,血糖降下作用に加え,他の経口血糖降下薬にはない体重減少効果を有することがあげられる. 一般的なSGLT2阻害薬の適応症例としては,糖尿病罹病歴が短く,インスリン分泌が保たれており,大血管障害の既往がない,標準体重以上の若年から壮年の症例となる.Q55で解説されたような症例に対して第一選択薬となるほか,SGLT2阻害薬は既存の経口血糖降下薬とは違う作用機序であることから上乗せ効果を期待できる.つまり,単剤または2剤程度の既存の経口血糖降下薬を使用しても効果不十分である症例への第二・第三選択薬としての使用となる.また,メトホルミンの忍容性が悪い肥満2型糖尿病症例に対する代替薬として有用と考えられる. メトホルミン,ピオグリタゾンなどのインスリン抵抗性改善薬との併用は,海外においてエビデンスがあり,今後日本人でのエビデンスの構築が待たれる. 松橋らは,イプラグリフロジンを他剤と併用しBMI 25 kg/m2以上の2型糖尿病症例7例に対しInBody770を用い,投与4週後の体組成変化を検討した.グリコアルブミン,体重,体脂肪,細胞外水分量の改善を認めている1)ことから,BMI 25 kg/m2以上の症例において海外と同様に有効であると考えられる. また,平均BMI 29 kg/m2の欧米人糖尿病患者に比し,日本人糖尿病患者の平均BMIが24 kg/m2であり肥満症例は少ないものの,日本人では低いBMIレベルにおいても内臓脂肪蓄積が認められ,BMI 23 kg/m2程度からでも脂肪肝も認める.このことからBMI 23~25 kg/m2程度の症例においても内臓脂肪減少効果および脂肪肝改善効果が見込まれる.したがって,高度肥満症例に限らず,BMI 23 kg/m2以上の症例でも有効である可能性がある. さらに,インスリン使用中の症例であっても,SGLT2阻害薬を併用することでインスリン使用量を減らすことができるため,体重減少効果があると報告されている.皆川は,インスリン投与中の21例(平均インスリン投与量45.0単位/日)に対し,SGLT2阻害薬の投与を行い,投与開始時40.0単位/日に減量し,2か月後40.4単位/日と1割のインスリン投与量の減量が得られ,平均HbA1cが8.5%から7.9%に改善し,平均体重も80.5 kgから78.4 kgに2.1 kg減量できたと報告している2).一方,インスリンを減量しない場合には,低血糖を生じる危険性があるため注意が必要である.併用薬 当院においてSGLT2阻害薬が処方されている症例の併用薬を調べたところ(表1),メトホルミンが61%と最多であり,続いてDPP-4阻害薬が44%であった.またインスリンも39%使われており,平均インスリン使用量が41.1単位/日であったが,SGLT2阻害薬の使用により35.1単位/日と約15%のインスリン使用量の減量および体重減少効果がみられた.
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