2228小児急性脳症診療ガイドライン2016
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第3章 全身管理と脳低温・平温療法47行う場合を除き,二酸化炭素分圧を低く保つ状態は脳循環血流量の低下をもたらすことに配慮して設定を行う.気管挿管時の喉頭展開は,脳圧亢進状態をさらに悪化させ脳ヘルニアを惹起する可能性があるため,十分な鎮静を行ってから気管挿管をすることが推奨される.また,気管挿管による人工呼吸器管理下では鎮痛薬(フェンタニルなど)と鎮静薬を十分投与することが推奨される.神経筋遮断薬を用いる場合は,ストレス徴候(頻拍,高血圧,瞳孔散大,流涙など)の有無に注意し,適切に鎮静されていることを確認する.循環管理循環管理のモニター装置:心電図モニター,血圧・脈圧モニター,パルスオキシメトリー(可能であれば中心静脈血圧モニター,中心静脈酸素飽和度モニター).循環管理の目標は,血圧と心拍出量を適切に維持し,組織への酸素供給および基質の供給を回復し維持することである.中枢脈拍と末梢脈拍,心拍数,毛細血管再充満時間,血圧,四肢体温,皮膚色をチェックするなど身体所見の十分な観察を行う.血圧・脈圧の測定には必要であれば留置動脈ラインによるモニタリングが推奨され,1~10歳の小児では収縮期圧で70+年齢×2 mmHg,10歳を超える小児では90 mmHgを超えることが参考となる目標値である.十分な脳灌流圧を維持・管理する目的で脳灌流圧(脳灌流圧〈CPP〉=平均動脈圧〈MAP〉-頭蓋内圧〈ICP〉)のモニターを行うことがある.脳血流を確保するため,必要十分な輸液を行うことが推奨され,不要な水分制限や利尿薬投与を行うことは推奨されない.心電図モニターによって連続的に心拍数と不整脈の有無をチェックすることが可能である.心臓超音波装置は心機能と血管内血液用量を経時的に測定し評価するのに有用である.適宜施行する標準12誘導心電図,胸部X線画像も心機能評価の参考となる.血液検査として動脈静脈血ガス,ヘモグロビン,ヘマトクリット,血糖,電解質,BUN,クレアチニン,カルシウム,乳酸などを測定し循環管理のための指標とする.全身の酸素摂取量が一定であると仮定した場合,動脈静脈酸素較差の上昇は心拍出量の低下を示唆する.人工呼吸器管理,脳圧管理,けいれんのコントロールなどの際に使用する鎮静薬,鎮痛薬,抗けいれん薬の投与によって血圧の低下をきたすことがしばしば認められるため注意する.持続的ショックが認められる場合,その要因となる病態を判定しその治療を行うとともに0.9%生理食塩水あるいは糖を含まない細胞外液型輸液20 mL/kgを5~10分で静注することが推奨される.心原性ショックが否定できない場合は肺水腫の合併や呼吸機能の悪化に十分留意しながら5~10 mL/kgを10~20分で静注することが推奨される.通常の1時間毎の維持輸液量(mL)の参考となる目安は10 kg以下なら4×体重(kg),10~20 kgなら40+2×(体重(kg)-10),20 kg以上なら40+体重(kg)である.中枢神経管理中枢神経管理のモニター装置:aEEG(可能であれば脳圧測定モニター).

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