2229医療系学生のための 図解病態治療学テキスト&ノート
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492 かぜ(感冒)とインフルエンザ,急性気管支炎3 上気道の急性炎症のみでなく,下気道(気管,気管支,肺)にまで広がった急性炎症をかぜ症候群という. 原因としてウイルスが80~90%を占める.ライノウイルス,コロナウイルス,パラインフルエンザウイルス,RSウイルスなどがある.ウイルスのほかに,マイコプラズマ,A群β溶血性レンサ球菌(溶よう連れん菌),百ひゃく日にち咳ぜき菌,淋りん菌などがある. 症状として,微熱,頭痛,発熱,悪お寒かん,鼻び汁じゅう,咽頭痛,咳せき,嗄さ声せい,食欲不振などを呈する. 治療:ウイルス感染がほとんどであるため,安静にして水分補給を行う.対症療法を行う.二次細菌感染が疑われれば,抗菌薬を使用する.₂インフルエンザ インフルエンザはインフルエンザウイルスによってひきおこされる急性感染症で,多くは上気道炎症状・呼吸器疾患を伴うことで流行性感冒ともいわれる(表3-1). 突然の発熱で高熱を呈する.脱力感や関節痛など全身症状が強い.頭痛は強い.鼻汁,咽頭痛など上気道炎症状はみられない.悪心・嘔吐,下痢などの消化器症状は軽度である. 合併症として肺炎とインフルエンザ脳症がある. 感染経路は咳やくしゃみなどによる飛ひ沫まつ感染が主である.潜伏期間は1~2日が通常であるが,最大7日までである.感染者が他人へウイルスを伝でん播ぱさせる時期は発症の前日から症状が軽快してのちおよそ2日後までである. 新型インフルエンザとは,季節性インフルエンザと抗原性が大きく異なるインフルエンザであって,国民が免疫を獲得していないことから全国的かつ急速な蔓延により国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいう. 鳥インフルエンザとは,A型インフルエンザウイルスが鳥類に感染しておきる鳥類の感染症である. このうちH5N1亜型ウイルスなどでは家か禽きんと接触したヒトへの感染・発病が報告されている. 今のところヒトに感染する危険性は極めて低いが,ヒトインフルエンザウイルスと混じり合い,ヒトの間で感染する能力をもつウイルスに変異し,世界的流行(パンデミック)をひきおこす可能性がある. 治療:抗インフルエンザウイルス薬を投与する(図3-3).対症療法を行う.二次細菌感染が疑われれば,抗菌薬を投与する. 予防:インフルエンザワクチンの予防接種を行う.₃急性気管支炎 気管,気管支の粘膜の急性炎症を急性気管支炎という. 多くはウイルス感染による.そのほか細菌,刺激性ガスなどによる.かぜ症候群に続発しておきることが多い. 咳,痰たんがみられる.発熱,食欲不振,全身倦怠感,前胸部不快感を伴うこともある. 細菌感染では血液検査で白血球の増加がみられるが,ウイルス感染では白血球の増加はみられない.細菌感染では膿のう性せい・粘性痰がみられる. 治療:ウイルス感染の場合,安静にして水分補給を行う.対症療法を行う.細菌感染による場合,抗菌薬を投与する.

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