小児慢性特定疾病
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17. 心室瘤4慢性心疾患251 遺伝子異常が判明しない場合には、原因は不明といわざるをえない。疫 学 小児での有病率は不明であるが、まれな疾患である。小児心筋症の2.5~5%を占める。小児の平均の発症年齢は6歳である。臨床症状 易疲労、呼吸困難、体重増加不良などを認め、無症状例は少ない。労作時の呼吸困難が特徴的である。診断の際の留意点 III音を聴取することがある。浮腫、肝腫大、腹水など心不全所見を認める。治 療1)‌日常生活の管理 無症状ならDの管理区分。有症状ならCの管理区分。原則として強い運動は禁止、学校の運動部は禁止。2)‌薬物治療 慢性心不全に対する治療を行う。利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(angiotensin converting enzyme-inhibitor;ACEI)、β遮断薬(カルベジロールなど)の投与を考慮する。β遮断薬による徐脈化で左房圧を下げるという考えもあるが、効果はいまだ不明である。 急性心不全には、利尿薬、ホスホジエステラーゼIII阻害薬、カテコラミンの点滴を行う。 不整脈に対しては、抗不整脈薬を投与する。心室性頻拍症に対しては、アミオダロン内服や植込み型除細動器(ICD)が適応となる。3)‌デバイス治療 心停止蘇生例に対しては、ICD植込みが適応となる。4)‌心臓移植 予後不良であるので、心臓移植を考慮すべきである。その前に状態悪化が予想されるときは、人工心臓の植込みが適応となる場合がある。予 後 難治性の予後不良の疾患である。特に乳児期発症例は予後が不良である。小児の2年生存率は50%である。成人期以降の注意点 心不全症状が存在することが多い。定期的な受診と治療管理が必要。心不全が進行すれば予後不良である。定期的な受診と治療管理が必要。心機能低下が進行すれば心臓移植の適応となることがある。妊娠・出産は難しい。生涯にわたる管理が必要。診断の手引き診断方法1)‌症状 易疲労、呼吸困難、体重増加不良など。2)‌胸部X線所見 胸部X線で肺うっ血を認めることがある。3)‌心電図所見 左室肥大を認めることがある。ST低下など、非特異的所見を認めることがある。4)‌心エコー所見 左室流入波形で左室拡張障害を認める。この所見に呼吸性変動がない(収縮性心膜炎との鑑別に重要)。心室壁の肥厚は認めない。左房は拡大、左室は拡大しない。左室収縮低下はない。5)‌心筋シンチグラフィ 心筋シンチグラフィで心筋灌流低下を認めることがある。6)‌心臓カテーテル、心筋生検 左室の拡張障害の所見を認める。左室拡張末期圧上昇、左室圧の拡張期dP/dtの低下、拡張期圧dip and plateau(square root sign)。心筋生検では、心筋の変性、線維化を認める。7)‌遺伝子異常 細胞骨格や筋原線維を構成する蛋白質の遺伝子変異で本症が発生することがある。8)‌確定診断 硬い左室、左室拡大はない、収縮能は正常、基礎疾患はない、で診断。心エコー、心臓カテーテルが重要。当該事業における対象基準全A17. ‌心室瘤告示番号35告示疾病名しんしつりゅう 21 心室瘤英語名Aneurysm/diverticulum of ventricle概 要概念・定義 先天性または後天性に心室にできた憩室様の膨隆。膨隆部の壁は心内膜、心筋、心外膜の3層構造のこともあるし、線維化組織のこともある。先天性のものは前者が多く、心筋梗塞後の心筋壊死に起因するときは、後者が多い。破裂のリスクがあり、右室憩室は手術適応があれば手術、左室瘤は手術困難で難治性の疾患である。憩室切除後に縫合部瘢痕から不整脈が出現することがある。憩室の過切除で心不全になることもある。生涯の経過観察が必要な疾

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