小児慢性特定疾病
2/18

総論2はじめに 児童福祉法の一部を改正する法律(平成26年法律第47号)が、2014(平成26)年5月30日に公布された。この法改正により、小児慢性特定疾患治療研究事業は、その名称を小児慢性特定疾病対策と変え、医療費助成制度はより公平かつ安定的な制度へと改められた。 この法改正に基づく当該事業の見直しに関する課題と方向性については、社会保障審議会児童部会小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会による「慢性疾患を抱える子どもとその家族への支援の在り方(報告)」1)(2013〈平成25〉年12月18日)にまとめられている。すなわち、(1) 公平で安定的な医療費助成の仕組みの構築、(2) 研究の推進と医療の質の向上、(3) 慢性疾患児の特性をふまえた健全育成・社会参加の促進、家族に対する地域支援の充実、といった3つの課題について様々な検討がなされ、今回の新制度となった。制度の歴史と改正の経緯 小児慢性特定疾病対策は、1968年に先天性代謝異常の医療給付事業として始まった。その後、1969年に血友病の医療給付事業が始まり、1970年に小児がん治療研究事業が開始された。1972年には慢性腎炎・ネフローゼ治療研究事業および小児ぜんそく治療研究事業が始まったが、1974年に、それまで実施していた疾患別の事業を統合し、さらに糖尿病、膠原病、慢性心疾患、内分泌疾患を新たに加えた9疾患群を対象とする「小児慢性特定疾患治療研究事業」が創設された。この事業は、「児童の健全育成を目的として疾患の治療法の確立と普及をはかり、あわせて患児家庭の医療費を軽減すること」を目指して整備された。 1990年には、新たに神経・筋疾患を加えた10疾患群を対象とする事業となった。2002年より当該事業の最初の大規模な見直しが始まり、2005年に、児童福祉法を改正し、当該事業を法律に基づく事業として法制化した。このとき、新たに慢性消化器疾患を加えた11疾患群とする一方、大臣告示により対象疾患と対象基準(疾患の症状の程度)を定め、一定の重症度以上もしくは高額な医療費が必要な患児を対象とすることとした。また、世帯所得に応じた自己負担額を導入するとともに、福祉サービスとして日常生活用具給付事業およびピアカウンセリング事業を開始した。翌2006年には、気管支喘息の対象基準を改正し、軽症患児を対象から外した。当時は、514の告示疾患(+2つの包括病名)が対象であり、年間約11万人の患児が当該事業において医療費助成を受けていた。 2010年頃から、厚生労働科学研究費補助金による小児慢性特定疾患治療研究事業に関する研究班を中心に、徐々に当該事業の対象疾患の見直し等が議論されるようになり、2012(平成24)年に厚生労働省社会保障審議会児童部会小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会が設置され、今後の制度の在り方についての公式の議論が始まった。翌2013(平成25)年12月18日には報告書がまとめられ、これをふまえて、2014(平成26)年の第186回通常国会に児童福祉法改正案が提出され、同年5月23日に「児童福祉法の一部を改正する法律」(2014〈平成26〉年法律第47号)が可決成立、5月30日に公布された。この改正法は、2015(平成27)年1月1日から施行され、小児慢性特定疾病対策は約10年ぶりの改正となった。新制度では、704の告示疾病(+56の包括病名)が対象となり、年間約15万人の患児が当該制度にて医療費助成を受けると試算されている。事業の概要 児童福祉法改正法に基づく新しい小児慢性特定疾病対策の概要は以下のとおりである。1)根拠法 小児慢性特定疾病の医療費助成については、児童福祉法第19条の2、小児慢性特定疾病児童等の自立支援事業については、同法第19条の22に規定される。また、国の費用負担については、同法第53条に定められる。2)法の趣旨 持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革新しい小児慢性特定疾病対策について 1 新制度の概要とおもな変更点国立成育医療研究センター 臨床疫学部小児慢性特定疾病情報室掛江直子

元のページ 

10秒後に元のページに移動します

page 2

※このページを正しく表示するにはFlashPlayer10.2以上が必要です