小児慢性特定疾病
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3総 論の推進に関する法律に基づく措置として、小児慢性特定疾病の患者に対する医療費助成に関して、その実施に要する経費に消費税の収入を充てることができるようにするなど、公平かつ安定的な制度を確立するほか、基本方針の策定、慢性疾病児童の自立支援事業の実施、調査および研究の推進等の措置を講ずる。なお、医療費助成については、小児慢性特定疾病にかかっている児童等について、健全育成の観点から、患児家庭の医療費の負担軽減を図るため、その医療費の自己負担分の一部を助成するという方針とした。3)対象者 原則として18歳未満の児童とする。ただし、18歳未満で当該事業の対象となっており、かつ18歳以降も引き続き治療が必要と認められる場合には、20歳未満の者まで対象とする。4)実施主体 当該事業を実施する主体は、都道府県、政令指定都市、中核市である。新制度施行時点では約110の実施主体となっていた。5)所管課 旧制度から新制度施行時、さらに2015(平成27)年9月30日までは、雇用均等・児童家庭局母子保健課が所管していたが、同年10月1日より健康局難病対策課に移管された。6)補助率と予算 当該事業の負担割合は、旧制度と同様に、国は実施主体が支出する費用の2分の1を負担する。新制度では義務的経費化され、この費用負担には消費税収入が充てられることとなった。給付対象者は年間約15万人、事業の全体予算は約340億円と試算される。おもな改正点 法改正による当該事業のおもな改正点は、以下のとおりである。1)予算の義務的経費化 従来の小児慢性特定疾病医療費助成は、2005(平成17)年より児童福祉法に基づく事業とはなったものの裁量的経費であったため、国内経済の動向によっては経費削減を余儀なくされる位置づけであり、実際に毎年度の予算が10%削減されるという問題を抱えていた。 今回の見直しに先立ち、「社会保障・税一体改革大綱」(2012〈平成24〉年2月17日閣議決定)、ならびにこの方針を継承する「社会保障制度改革国民会議報告書」(2013〈平成25〉年8月6日)により、難病制度と同様に公平・安定的な支援の仕組みとなるよう措置することが求められ、さらに「持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律」(2013〈平成25〉年12月5日成立)の要請が加わるという政治的な後押しがあったことから、裁量的経費から消費税増収分を活用する義務的経費へと変更されることとなった。この対応により、当該予算は任意に縮減される心配がなくなり、財政的に安定した制度となった。2)対象疾病の拡大と疾患群の追加 対象疾病の見直しは、小児慢性特定疾病の「対象疾病の考え方」である①児童期に発症する疾病であること、②次の4つの要件(ア)慢性に経過し、(イ)生命を長期にわたって脅かし、(ウ)長期にわたって生活の質を低下させ、(エ)長期にわたって高額な医療の負担が続く、すべてに該当する疾病であり、③診断基準・それに準ずるものがある疾病であること、を考慮して、日本小児科学会の全面的な協力のもと厚生労働科学研究班(平成25年度研究代表者 松井陽 国立成育医療研究センター院長、平成26、27年度研究代表者 横谷進 国立成育医療研究センター副院長)にて、既存の対象疾病の再整理と新規追加疾病の候補の検討を行い、国に具体的な提案を行った。これを受けて、厚生労働省社会保障審議会児童部会小児慢性特定疾患児への支援の在り方に関する専門委員会において最終的に新しい対象疾病が選定された。 旧制度では、516疾病(514疾病と2つの包括病名。包括病名とは、たとえば「1から54に掲げるもののほか、悪性腫瘍である旨を明示するすべての疾病名」等をさす)が対象とされていたが、今回の見直しにおいて、まずこの516疾病について、近年の医学的知見をふまえて技術的に再整理を行い、(1)小児期には発症しないと考えられるようになった疾病、(2)治療成績の向上等により慢性の経過を取ることがほとんどなくなった疾病、(3)名称・概念が使われなくなった疾病等に該当する19疾病を対象から外した。また、大きな分類での病名にまとめられていた疾病や包括病名に該当するとされていた疾病については、小児期の発症頻度の高い疾病名をできるだけ優先し、疾病分類のバラつき等の整理を行い、651疾病(597疾病と54の包括病名)へ整理した。さらに、前述の「対象疾病の考え方」の①~③のすべてに該当すると判断された109疾病(107疾病と2つの包括病名)を新たに追加し、新制度では760疾病(704疾病と56の包括病名)が対象疾病として選定された。 これらの対象疾病の見直しに伴い、旧制度の11疾患群について、「血友病等血液・免疫疾患」を「血液疾患」と「免疫疾患」に分け、「先天性代謝異常」等に内包されていた皮膚疾患を「皮膚疾患」群として分離し、さらに新規追加疾病をふまえて「染色体

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