小児慢性特定疾病
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248各論❹|慢性心疾患右心不全徴候のある例に対しては、ICD植込みが適応となる。 ICD植込み後、心室頻拍に対する適切作働が発生することがある。このため、カテーテルアブレーションが併用される。右室の脂肪変性による線維化瘢痕部位のリエントリーに対して回路の切断をはかる。 慢性心不全症状に対しては、抗心不全薬物療法がなされる。 内科的治療に反応しない場合には、心臓移植の適応となる。その前に状態悪化が予想されるときは、人工心臓の植込みが適応となる場合がある。予 後 小児での予後はいまだ不明であるが、心不全死、突然死がありうる。成人期以降の注意点 若年者の突然死の原因となる。動悸、易疲労など。無症状のこともある。定期的な受診と治療管理が必要。不整脈と心不全に対する治療を行う。心機能低下が進行すれば心臓移植の適応となることがある。有意な心機能低下があれば、妊娠・出産は難しい。生涯にわたる管理が必要。診断の手引き診断方法1)‌症状 若年者の突然死の原因となる。動悸、易疲労など。無症状のこともある。2)‌胸部X線所見 非特異的。3)‌心電図所見 右側胸部誘導V1~V3のT波の陰転化。V1~V3のQRS波の後にノッチ(ε波)を認める。左脚ブロック型の心室頻拍を認める。4)‌MRI、CT所見 右室に特異的所見である、瘤形成、肥厚した肉柱、突出(bulging)を認める。右室全体の収縮低下を認める。脂肪浸潤を認める。MRIで、遅延性濃染を認めることもある。5)‌心臓カテーテル、心筋生検 右室造影で特異的所見である、瘤形成、4mm以上の肥厚した肉柱を認める。右室全体の収縮低下を認める。心筋生検で、脂肪浸潤、線維化が著明である。6)‌遺伝子異常 細胞骨格を構成する蛋白質の遺伝子変異で本症が発生することがある。7)‌診断基準 心臓カテーテル造影、CT、MRIで、右室瘤、拡大した右室。心筋生検で脂肪浸潤、線維化。当該事業における対象基準心A14. ‌心筋緻密化障害告示番号29告示疾病名しんきんちみつかしょうがい 18 心筋緻密化障害英語名Non-compaction of the ventricle概 要概念・定義 胎生期には、左室内膜側心筋層は、粗な間隙が網目状に乱れた走行をしており、これが発育とともに密となって内腔面の粗い肉柱形態も消失して、肉柱は浅く細かくなっていく。心室、特に左室の心筋が全層にわたって緻密な状態に成熟せず、間隙が多くなっている状態を緻密化障害という。断層心エコー、MRIまたは左室造影法によって左室内面の粗い肉柱形成とその間の深い陥凹を認め、その心外膜側に、緻密化障害層より薄い緻密化層を認める。家族性のことがあり、臨床的には拡張型心筋症の病態をとる。病 因 胎生期には、左室内膜側心筋層は、粗な間隙が網目状に乱れた走行をしており、これが発育とともに密となって内腔面の粗い肉柱形態も消失して、肉柱は浅く細かくなっていく。心室、特に左室の心筋が全層にわたって緻密な状態に成熟せず、間隙が多くなっていることに起因する。 細胞骨格や筋原線維を構成する蛋白質の遺伝子変異で本症が発生することがある。X染色体上のta-fazzin(TAZ)遺伝子異常によるものをBarth症候群とよぶ。疫 学 まれな疾患である。有病率は不明である。臨床症状 乳児期では高度の心不全症状を認める。成人では軽症のことがある。血栓塞栓や不整脈を合併することがある。時に成人で、無症状で偶然発見されることもある。治 療1)‌日常生活の管理 無症状ならDの管理区分。有症状ならCの管理区分。原則として強い運動は禁止、学校の運動部は禁止。2)‌薬物治療 無症状の者への薬物治療の適応は、明らかでない。有症状例には慢性心不全に対する治療を行う。 利尿薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬(an-

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