小児慢性特定疾病
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15. 拡張型心筋症4慢性心疾患249giotensin converting enzyme-inhibitor;ACEI)、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(angiotensin II re-ceptor blocker;ARB)を投与する。β遮断薬(カルベジロールなど)の投与も考慮する。 急性心不全には、利尿薬、ホスホジエステラーゼIII阻害薬、カテコラミンの点滴を行う。 不整脈に対しては、抗不整脈薬を投与する。 心室性頻拍症に対しては、アミオダロン内服や植込み型除細動器(ICD)が適応となる。3)‌デバイス治療 心停止蘇生例に対しては、ICD植込みが適応となる。右室と左室が同期して収縮していない例や、心電図上QRS幅が広い例では、心室再同期療法のペースメーカ植込みが適応となる場合がある。4)‌心臓移植 内科的治療に反応しない場合には、心臓移植の適応となる。その前に状態悪化が予想されるときは、人工心臓の植込みが適応となる場合がある。予 後 難治性の予後不良の疾患である。特に乳児期発症例は予後が不良である。時に成人で、無症状で偶然発見されることもある。成人期以降の注意点 無症状で偶然診断されることもある。小児期に診断される場合は、心不全症状が存在することが多い。定期的な受診と治療管理が必要。心不全が進行すれば予後不良である。心機能低下が進行すれば心臓移植の適応となることがある。有意な心機能低下があれば、妊娠・出産は難しい。生涯にわたる管理が必要。診断の手引き診断方法 本症の左室心筋は、心外膜側の薄い緻密化層と心内膜側の厚い肉柱の網状構造(緻密化障害層)の2層からなる。確定診断は肉眼所見、画像診断、組織所見で、拡張型心筋症と心内膜線維弾性症を除外する必要がある。1)‌症状 乳児期では高度の心不全症状を認める。成人では軽症のことがある。血栓塞栓や不整脈を合併することがある。2)‌胸部X線所見 胸部X線で心拡大を認める。非特異的である。3)‌心電図所見 左室肥大を認めることもあるが、非特異的である。4)‌心エコー所見 緻密化障害層(NC)とより薄い緻密化層(C)を認める。下記の診断基準3がover diagnosisが少なく、最近汎用されている。① 診断基準1:収縮期にNCの厚さがCの厚さの2倍(成人)ないし1.4倍(小児)以上。② 診断基準2:拡張期にCの厚さ/(NCの厚さ+Cの厚さ)が0.5未満。③ 診断基準3:拡張期にNCの厚さがCの厚さの2倍以上。 上記の診断基準に加え、カラードプラで、血流が左室内面の粗い肉柱とその間の深い陥凹に入ること。5)‌MRI 拡張期にCの厚さ:(NCの厚さ+Cの厚さ)が1:2.3以上。6)‌心臓カテーテル、心筋生検 心室収縮能は低下し、心室は拡張する。心筋生検では特異所見を認めないことが多い。左室造影で、粗い肉柱と、その間の深い陥凹を認める。7)‌遺伝子異常 細胞骨格や筋原線維を構成する蛋白質の遺伝子変異で本症が発生することがある。8)‌診断基準 心エコーまたはMRIの診断基準を用いる。当該事業における対象基準心A15. ‌拡張型心筋症告示番号4告示疾病名かくちょうがたしんきんしょう 19 拡張型心筋症英語名Dilated cardiomyopathy概 要概念・定義 明らかな原因がなく、左室または両心室が拡張し、収縮能が低下して心不全を呈する疾患。組織上は心筋細胞の変性、線維化を認める。しばしば家族性を呈し、筋原線維や細胞骨格蛋白の遺伝子異常を認めることがある。突然死、うっ血性心不全、不整脈などを呈する。治療は、薬物治療、心室再同期療法、人工心臓の植込み、心臓移植などである。治療困難で予後不良の疾患である。乳幼児など、若年者ほど予後は悪い。病 因 時に家族性を呈する。このような家系の遺伝形式は常染色体優性遺伝である。30%にミオシン重鎖、ミオシン軽鎖、トロポミオシン、トロポニン、ミオシン結合蛋白C、アクチンなど、サルコメアを形成する蛋白質や細胞骨格蛋白遺伝子異常を認める。 遺伝子異常が判明しない場合には、原因は不明といわざるをえない。

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