2231続・イメージからせまる小児神経疾患50
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運動障害・嚥下障害で発症し2年11カ月の経過で死亡した3歳女児104T1強調像で橋から中上位頚髄に及ぶ広範な軽度低信号を呈する髄内腫瘍が認められる(非供覧のT2強調像では高信号,造影剤による増強効果はみられず).腫瘍は主として脳幹背側にあり後方に突出している.脳室も中等度拡大し水頭症と診断される.第4脳室に多房性かつ囊胞を伴う高吸収域の腫瘍を認め,テント上の脳室系も著明に拡大している.脳幹腫瘍の再発ならびに水頭症と診断される.水頭症を伴う橋から頚髄に及ぶT1・T2強調像で低・高信号の腫瘍病変から,脳幹部神経膠腫が疑われる1). 病理組織①では,双極性突起を伸ばす紡錘形細胞からなる充実部と細胞間に微小囊胞を有する海綿状部からなり,毛様細胞性星細胞腫と診断された(図3).腫瘍増殖の目安であるKi67抗原陽性核の割合(MIBインデックス)も1%以下であった(良性腫瘍は5%未満).病理組織②では,多染性核を有するアストロサイト様の腫瘍細胞が高密度にみられ,MIBインデックスも30~40%で悪性所見を呈し,退形成性星細胞腫(anaplastic astrocytoma)と診断された(図4)(陽性核が褐色に染まっている).橋および延髄上部に発生する神経膠腫は半数以上が橋に発生し,錐体路症状と三叉神経,外転神経,顔面神経,聴神経などの麻痺,運動失調で発症する1).組織学的には分化度・異型の程度により,grade 2のびまん性星細胞腫(diffuse astrocytoma),grade 3の退形成性星細胞腫,grade 4膠芽腫(glioblastoma)に分けられる2).Grade 1の毛様細胞性星細胞腫(pilocytic astrocytoma)は比較的稀である.本例では長めの臨床経過により神経膠腫の二次性悪性化が生じたものと推定される.脳幹部神経膠腫は発生部位の問題から手術による完全摘出が困難な場合が多く,放射線照射が行われるが,平均生存期間は1年未満と予後不良である.脳幹部神経膠腫は,CT・MRIでは橋・延髄の腫大がみられ,MRIのT1強調像で軽度低信号,T2強調像では高信号を示し,増強効果は様々である. 〔林 雅晴〕文 献 1) 宮田理英,林 雅晴.脳腫瘍.有馬正高,監修,加我牧子,稲垣真澄,編.小児神経学.東京:診断と治療社,2008:284⊖9. 2) 吉野雅美.小児脳腫瘍治療の新知見―脳腫瘍の最新の分類.小児科診療2007;70:1495⊖500.問題1の答え問題2の答え問題3の答え 乳幼児に緩徐に進行する運動障害,脳神経麻痺を認めた場合,鑑別診断において脳幹部神経膠腫も考慮する必要がある.Key note図3 病理組織①(HE染色)  口絵カラー35 100.00μm100.00μm図4 病理組織②(Ki67染色)  口絵カラー36 100.00μm100.00μm

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