2236必携 脳卒中ハンドブック 改訂第3版
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鑑別が必要な疾患である.これら以外に脳血管攣縮を発現する疾患や病態として,片頭痛[家族性片麻痺性片頭痛(familial hemiplegic migraine;FHM)を含む],SAH,血管壁の機械的損傷,未破裂脳動脈瘤,薬剤(エルゴタミン製剤,エフェドリン,コカイン,トリプタン製剤等),褐色細胞腫やカルチノイド腫瘍,高Ca血症,子癇,ポルフィリン症(porphyria)などが知られている. 経口避妊薬(ピル)は血液凝固能を亢進し,若年女性そ の 他1経口避妊薬,妊娠あるいは周産期に狭窄した動脈が認められ,のちに狭窄が改善して元に戻っていることが確認できれば血管攣縮と診断される(図6).激しい後頭部痛を伴い,後頭葉などに脳梗塞を発症する症例を時に経験する.若年女性に多くみられ,片頭痛,妊娠,出産後,エルゴタミン製剤の影響などの原因が疑われるが,その発症機序は未だ不明である.欧米では「可逆性脳血管攣縮症候群(reversible cerebral vasoconstriction syndrome;RCVS)」7)あるいは「Call-Fleming症候群」とも呼ばれる.脳梗塞病変のみならず,大脳円蓋部のくも膜下出血(subarach-noid hemorrhage;SAH)や脳葉内出血を呈することもある. 診断ではMRアンギオグラフィー(MRA)や脳血管撮影が重要である.椎骨動脈解離や高血圧性脳症とのA 急性期の診断と治療220IML症例の脳生検の病理所見図4と同一症例.左側が低倍率所見で,右側が高倍率所見である.脳表の血管内に異型性の強い大きな核を有するリンパ球の集族を認め,免疫組織染色ではB細胞マーカーが発現し,B細胞性のIMLと診断された.図5血管攣縮により脳梗塞を発症した若年女性30歳女性.後頭部痛を伴い,左の視野障害が急に出現した.頭部MRIT2強調画像(a)では右後大脳動脈領域に低信号域を伴う高信号域を認め,FLAIR像(b)でも梗塞巣が確認でき,右後大脳動脈領域の出血性梗塞と診断された.喫煙以外には特にリスク因子はなかった.頭部MRA(c)では右後大脳動脈に分節性に狭窄所見(矢印)を認め,フォローアップのMRA(d)では狭窄所見は消失し,血管攣縮と診断した.図6acbd

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