2236必携 脳卒中ハンドブック 改訂第3版
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 TOAST分類1)では,脳梗塞を,①大血管アテローム硬化による脳梗塞(アテローム血栓性脳梗塞),②心原性脳塞栓症,③小血管閉塞による脳梗塞(ラクナ梗塞)のほか,④その他の原因による脳梗塞(その他の脳梗塞),および⑤原因が特定できない脳梗塞(潜因性脳卒中)に分類している(本書「I-C 脳卒中の病型分類と各病態」の表2を参照). 「その他の脳梗塞」の病因としては,アテローム硬化以外の血管病変(非炎症性,炎症性),血液凝固異常,悪性腫瘍,血管攣縮,経口避妊薬,片頭痛,脳静脈・静脈洞血栓症などがあげられる2).「その他の脳梗塞」に分類される疾患のうち,脳アミロイドアンギオパチー(cerebral amyloid angiopathy;CAA)は通常高齢者に発症するが,それ以外の原因疾患の多くは若年者の脳梗塞の原因疾患としても重要である.脳梗塞の3つの臨床病型に該当しない場合や,若年者の脳梗塞の場合は,頭部造影MRIや髄液検査を含め,血管病変や血液凝固異常などの詳細な検索を行う必要がある. 本項では,TOAST分類において「その他の脳梗塞」に分類される疾患を列挙し,その詳細を解説する(表1).「その他の脳梗塞」とはA1 「その他の脳梗塞」とは,脳梗塞の3つの臨床病型以外の原因による脳梗塞であり,若年者でその頻度が高い.2 「その他の脳梗塞」は,アテローム硬化以外の血管病変(非炎症性,炎症性),血液凝固異常,悪性腫瘍,血管攣縮,経口避妊薬,片頭痛,脳静脈・静脈洞血栓症などに起因する.3 脳梗塞の3つの臨床病型に該当しない場合や,若年者の脳梗塞の場合は,頭部造影MRIや髄液検査を含め,血管病変や血液凝固異常などの詳細な検索を行う.4 血管炎や血管内悪性リンパ腫症(IML)などの診断では,脳生検が必要な場合がある.5 MELAS,低血糖,てんかん(Todd麻痺)では脳梗塞様の発作を呈するので,脳梗塞の鑑別診断として留意する必要がある.Points急性期の診断と治療7 その他の脳梗塞  7その他の脳梗塞213脳梗塞,TIAⅢ潜因性脳卒中(cryptogenicstroke) 潜因性脳卒中は原因不明の脳卒中であり,正確には原因不明の出血性脳卒中も含まれるが,通常は原因不明の虚血性脳卒中,すなわち原因不明の脳梗塞・一過性脳虚血発作(transientischemicattack;TIA)として理解されている.TOAST分類では,潜因性脳梗塞は「原因が特定できないもの(strokeofundeterminedetiology)」に属し,「2つ以上の原因が同定できるもの」,「通常の検索では明らかな原因が同定できないもの」,そして「不完全な検索で終わっているもの」の3つが想定されている(本書「I-C脳卒中の病型分類と各病態」の表2を参照).狭義の原因不明は「通常の検索では明らかな原因が同定できないもの」であるが,検査手段や検査期間は特定されていない. つまり,潜因性脳卒中とは,原因不明,原因不確定,明確に定義できない原因による脳梗塞を意味する.想定される可能性の高い原因としては,潜因性発作性心房細動,卵円孔開存(静脈血栓症が併存),大動脈プラーク,悪性腫瘍などがあげられる.多くの臨床統計では,すべての脳梗塞のなかで潜因性脳卒中は約25%(23~40%)を占める.潜因性脳卒中の多くは塞栓症であり,実臨床での頻度が高いことから,潜因性脳卒中のうち塞栓症を「塞栓源不明の脳塞栓症(embolicstrokeofundeterminedsource;ESUS)」(本書「III-A-3心原性脳塞栓症①―病態と診断」参照)と呼び,適切な治療選択のための議論が近年盛んである.用語解説

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